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〈メディア激変53〉伝える、海の向こうで―8 「中国ソフト」に利用殺到

2010年6月18日17時45分

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写真フリーゲートのペルシャ語版は2008年に開始した。「既に需要が高まっていた」と周世雨さんは話す=藤写す

 米ニュージャージー州立大学でコンピューター科学を教える周世雨(チョウ・シーユイ)さん(42)は2009年6月、仲間とともにめまぐるしい時を過ごしていた。周さんが副理事を務める「世界インターネット自由協会」(GIFC、本部・ワシントン)のグループが運営するサーバーが、通常の約6倍のアクセスを受けてパンクしたためだ。

 急増したアクセスは、遠く離れたイランからだった。イランでは当時、大統領選をめぐる混乱が続き、不満を持った改革派が、デモなどの場所や当局との衝突を伝える手段として、当局が規制しているはずのツイッターなどを活用していた。「規制をかわすため、我々のソフトを集中的に使っている」。周さんらは確信した。

 同じようなことは過去にもあった。07年秋には民主化デモがあったミャンマー(ビルマ)から通常の3〜4倍のアクセスが、08年春にも、騒乱が起きた中国のチベット自治区から、通常の約4倍のアクセスが殺到した。

 周さんらのグループが開発したのは、「フリーゲート(自由門)」や「ウルトラサーフ」という無償ソフトだ。

 本来、情報を自由にやり取りできるはずのネットは、言論を統制する一部の国や地域では規制の対象だ。当局が嫌う言葉を検索したり、その言葉を含むサイトを見たりすることはできない。だが、フリーゲートなどをダウンロードすれば、その制限をかわせる。

 仕組みはこうだ。ネット閲覧が自由な国にあるプロキシ(代理)サーバーを通して迂回(うかい)アクセスし、当局が追跡しづらいよう、ネット上の住所にあたるIPアドレスも刻々と変える。ネット上の統制と戦う人々の間では、知られた存在だ。

 イランからの利用殺到に、周さんは「自由を得るため使ってくれるのはうれしい」と思いながらも、当時はアクセスを一時制限せざるを得なかった。検閲をかいくぐる最大の目的地と定める中国で、より多くの人に使ってもらう余地を、常に空けておきたいためだ。

 周さんらのグループがソフトを開発したのは01年。メンバーは約50人で、米国を中心に台湾や韓国、日本にも散在している。いずれも、中国政府が「邪教」とみなす気功集団「法輪功」の信奉者らだ。中国の同胞が当局の弾圧に対抗し、自由にネットで情報収集できるように、との思いから開発した。

 利用者数は、最大の中国と、それに匹敵するイランのほか、サウジアラビアやシリア、ロシア、キューバなどにも広がり、計約150万人に上る。(藤えりか)

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