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〈メディア激変54〉伝える、海の向こうで―9 規制打破ソフト活用するVOA

2010年6月18日17時46分

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写真毎日、数百万ものメルマガを届ける「VOA中国語」のウェブスタッフ=米ワシントン、藤写す

 ネット上の検閲やフィルタリング(閲覧規制)をかわすソフト「フリーゲート」「ウルトラサーフ」を作る「世界インターネット自由協会」(GIFC)の副理事、周世雨(チョウ・シーユイ)さん(42)は、天安門事件のあった1989年、自宅で短波放送にかじりついていたのを覚えている。

 民主化を求め、北京の天安門広場に集まった学生らの中に、清華大生だった周さんもいた。自分たちのデモについて中国の新聞は書かないが、米政府の海外向け放送「米国の声(VOA)」は報じていた。少しでも情報を得ようと聴き入った。「人は自由に情報に触れることができなければだめだ」。そう感じた原体験だ。

 91年に渡米した。がんの治癒を願って気功集団「法輪功」に傾倒した父の影響で、自らも97年後半から信奉し始めた。しかし99年、北京で抗議行動を起こした法輪功は当局に一斉摘発され、非合法化された。中国軍幹部だった父も高齢の身で半年間、拘束された。周さんからすれば「父は気功をやっているだけ」だ。父の名誉を回復したい思いも、今の活動につながる。

 周さんが学生時代に情報源としたVOAや、米政府系「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は、中国やイランなど「ネット規制国・地域」のサイト読者向けに、フリーゲートなどへのアクセス方法をメールマガジンで知らせている。そうした地域では「六四(天安門事件)21周年」などのニュースを現地語で報じるVOAサイトの閲覧が、制限されているためだ。GIFC傘下のソフト開発会社と03年に契約した。

 「どうしたらニュースを届けられるか検討した結果、行き着いた」。VOAやRFAを管轄する「米放送管理委員会」(BBG)のIT担当ディレクター、ケネス・バーマンさん(58)は言う。「VOA中国語」の日々のメルマガ読者は数百万人に上るが、「中国政府は検閲やフィルタリングを公式には認めていないから、我々に抗議するのは難しいだろう」。

 規制の強い地域から「フリーゲートもウルトラサーフも効かない」という声が届くこともある。だが、「規制を打ち破ってくれてありがとう」というメールが現地から届いたりもする。

 中国やイランだけではない。「ネットや携帯で情報を得る人が増えるのに伴い、ネットをフィルタリングする政府は増えている」とバーマンさんは話す。この春にはエチオピア向けにもソフトを案内し始めた。ネットやラジオの規制が始まった、という報告が届いたからだ。「こうしたソフトがなければ、人々は情報に飢え、外の世界に対して誤った意見を持ってしまう」(藤えりか)

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