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〈メディア激変56〉伝える、海の向こうで―11 脱「米中心」、途上国の声発信

2010年6月18日17時46分

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写真途上国メディアのフォーラムで司会をするイーサン・ザッカーマンさん=米マサチューセッツ工科大、藤写す

 「米政府がネットの自由の促進に関心があるなら、なぜベトナムやモーリタニアについては取り組まず、中国やイランを強調するのか。米国務省の優先課題を打ち出しているだけではないか」。5月、チリの首都サンティアゴ。市民メディアのネットワーク「グローバル・ボイス(GV)」が、60カ国以上の市民記者やブロガーらを集めて開いた「市民メディアサミット」で、チュニジア人のブロガーは問題提起した。

 GVは100カ国以上のブログを約30言語で掲載するサイトだ。読者は記者やブロガー、市民活動家ら。成り立ち自体、「米中心主義」「商業主義」に反旗を翻してのものだった。

 GVの創業者の一人、レベッカ・マッキノンさんは2003年11月、米CNN東京支局長として、当時の小泉純一郎首相に数十分間、単独インタビューした。

 一国の宰相の単独取材は簡単に実現するものではない。しかも、自衛隊のイラク派遣や当時のブッシュ米大統領に関する質問が中心。米国の関心事だとマッキノンさんは考えた。だが、米国以外では繰り返し放送されたにもかかわらず、米国では取り上げられなかった。

 CNNは01年の同時多発テロ以降、愛国心をあおって視聴率を上げるフォックス・ニュースの追い上げに焦りを感じていた。米国で広告収入を稼ぐには、米国の視聴者にチャンネルを変えられないようにしなければならなかったと、マッキノンさんは振り返る。イラク戦争の元捕虜で「作られた美談」のヒロインとされた元米兵の初のインタビューや、マイケル・ジャクソンさんの裁判に、小泉首相は押しのけられた。

 マッキノンさんはCNNを去り、ネット研究で知られる米ハーバード大法科大学院バークマンセンターの研究員となる。そこで、知り合いのイーサン・ザッカーマンさん(37)と、同じ研究員として再会。留学やIT関連のボランティアなどでガーナ滞在経験が長いザッカーマンさんも、「アフリカを取り上げず、理解もしない」米メディアにいら立ちを覚えていた。

 「米国に外の世界に耳を傾けさせるため、世界の記事を配信する通信社のようなものを作ろう」。2人は04年12月、世界のブロガーを同大に招いて会議を開き、GVを立ち上げた。

 GVの本部は表向き、米国ではない。オランダのアムステルダムだ。「イラクを占領中の米国で設立していたら、中東のボランティアは離れていた」とザッカーマンさん。とはいえ、そこに物理的な拠点はない。事務所はあくまで、「みんなで公然と議論できるツイッターなどネット上」だ。(藤えりか)

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