現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. メディア激変
  5. 記事

〈メディア激変63〉変化を読む―1 「泡」のような言葉を書く

2010年7月2日19時0分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真オフィスでもiPadを手放さない糸井重里さん

 コピーライターの糸井重里さん(61)は、5月10日に「@itoi_shigesato」という登録名でツイッターの発信を始めた。

 「ブログを書いている友人が次々ツイッターに移ったので、初めはその近況を知るために読んでいた」

 商品やブランドのメッセージが正しく消費者に伝わるように言葉を考え抜く、広告のコミュニケーション。糸井さんは、80年代を代表する「おいしい生活。」(西武百貨店)など、数々のコピーで知られる。

 インターネットのブームから少し間を置いた98年、自らのメディアとしてサイト「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を開設。以来、このネットメディアを舞台にコラムを書き続けている。

 ツイッターの発信は「つぶやき」とも言われる。この表現は、コミュニケーションできない「ひとりごと」のように思え、違和感を覚えた。今いる場所や食べた物について書いたり、他人の言葉を伝言ゲームのように回したりする使い方も、あまり共感できなかった。

 「言葉は頭や内臓といった、肉体を経過したものじゃなくちゃ」

 考えが変わったのは、芸術家の横尾忠則さん(74)が今年3月末に始めたツイッター(@tadanoriyokoo)で、芸術や人生について奔放に語るのを見てから。「形にとらわれず、自分の思考をそのままメモしているのに驚いた。こういう使い方があるのかと思いましたね」

 「ほぼ日」のコラムでは、まとまった形で言葉を組み立てるが、ツイッターなら短く心に浮かんだ「泡」のような考えを書いていける。

 「起承転結の“起”の部分みたいなもの。短歌で言えば発句ですね」。まだ結論の出ない考えを世間に放り出す。その反応を受けながら、これからどうなっていくのか、自分の内部を探っていく。ゲームのようだと感じている。

 「日本中ではあっちこっちでカエルの声が聞こえているだろうな」。ある夜中、ふと、そんなことを思いつく。ツイッターに書き込んでみた。「今聞こえてますよ」。すぐに全国各地から反応があり、まるでカエルの輪唱のように次々と投稿が流れていく。頭の中にあったイメージが、リアルに感じられたことがうれしかった。今や、「軽い中毒症状」だという。

 「でも、ツイッターでできることには、まだ大した深さがあるとは思っていない」。言ってみれば、自分とつながりのある言葉の「単品」を、次々と出している状態。「こうしてまかれた情報と情報を、どうつないでいくか。それが重要になるんでしょうね」(服部 桂)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介