現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. メディア激変
  5. 記事

〈メディア激変64〉変化を読む―2 新たな物語の形、どうつくる

2010年7月2日19時0分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真「思いもよらない使い方がメディアを作る」と水越伸さん=東京都文京区

 「メディアは、その形がまだはっきりしていない時の方が面白い」

 歴史的、実践的なメディア研究で知られる東京大学情報学環の水越伸教授(47)は、ツイッターなどのソーシャル(交流)メディアが広がる現状について、こう話す。

 「ツイッターって、メールを送っているようでいながら、どこへでも伝わってしまう。『体感』としてまだよくつかめないメディア。遊びの部分もあるし、『すき間』のような緩さもある。かつてのラジオがそうだった」

 20世紀初め、ラジオは無線通信、無線電話として姿を見せる。「通話は“ダダ漏れ”で、他の無線機でも聞こえる。それに目をつけたキャンディー屋やサーカス団が、宣伝用に『放送』として使うようになる。思いもよらない使い方が、メディアを形作っていったんです」

 例えばインターネット元年と言われた1995年前後。「世界に発信するというこのメディアが一体何で、何ができるのか。経営者やアーティスト、学者や自治体関係者など、みんながネットの夢を語った」。今の状況はその時の雰囲気にも近い、と水越さんは見る。

 ツイッターやネット生中継サービス「ユーストリーム」などのサービスは、各地で続いてきた市民メディアの取り組みにも使われ始めた。

 「今は過去のどの時代とも違い、一般の人々が手軽に情報を発信、流通させることができる。では、その多くの情報から、どれだけ地域や集団の実情に即した『自分たちの物語』を編み上げていけるのか。市民メディアには、そんな力が問われてくると思う」

 情報に文脈を与え、「物語」として伝えていく力。それは、改めてマスメディアにも求められていると水越さんは言う。

 「メディア学者マクルーハンの言うように『メディアはメッセージ』。ネットでもiPadでも、新しいメディアが出てくれば、それに合った新しい伝え方のフォーマット、新しい『物語の形』をつくる必要がある」

 マスメディアはこれまで、世論を喚起するような、公共的な情報空間づくりを担ってきた。だが今では、その機能不全を指摘する声もある。一方で新しい市民参加型のソーシャルメディアは、ジャーナリズムにはこだわりのないネットビジネスのサービスでもあり、今後どう発展していくのか、まだ誰にもわからない。

 「両者が緊張感を保ちながら連携することで、それぞれの良さを生かした社会的な空間をつくっていけるのではないか」と水越さんは考えている。(編集委員・平 和博)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介