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〈メディア激変65〉変化を読む―3 現実空間を上書きするネット

2010年7月2日19時2分

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写真「ネットと現実空間がつながり始めている」と鈴木謙介さん=兵庫県西宮市

 5月末、オリコンのアルバム週間チャートの1位が話題を呼んだ。前週1位の歌手、徳永英明さんを抑えたのは、歌声合成ソフト「初音ミク」の利用者たちが動画サイト「ニコニコ動画」などで発表した自作曲を集めたCDだった。

 「新しいメディアは、既存のメディアに革命的変化を起こす、と言われてきた。でも実際は、そういったネット発のものを、既存のメディアビジネスが取り込んでいく」

 「暴走するインターネット」「ウェブ社会の思想」などの著書で知られる関西学院大学の鈴木謙介准教授(34)は言う。「それによって、中から少しずつ変わっていくんです」

 鈴木さんは、ネットが社会に与える影響を、情報発信などの「コミュニケーション」と「社会システム」という、二つの側面からとらえる。そして、「コミュニケーション」の変化は「さほど本質的ではない」と考えている。

 「例えばブログ。社会を変えるメディアと言われたが、今や芸能人の情報発信ツールと思っている人も多い。利用者が人口の1割を超えるあたりから、既存の枠組みに取り込まれてしまう。ツイッターも、そこに近づいている」

 ツイッターは、携帯電話やスマートフォン(多機能携帯端末)からの文章や写真の投稿、閲覧がしやすい。そのため、「『今ここ』という現実空間とネットの空間が連動していく」。さらに、スマートフォンのカメラ映像に、ツイッターの投稿などの電子情報を重ねて表示する拡張現実(AR)技術も登場。「現実空間を、ネットが上書きし始めているんですよ」

 この現実とネットの連動が、ツイッターなどを使わない残り9割の人々も巻き込んで「社会システム」を変えていく、と鈴木さんは見る。

 人と人の交流や活動が、大規模にネットへ広がっていくと、行動履歴はデータとして蓄積され、データベース化され、解析される。そして「行動ターゲティング」という、個々人の嗜好(しこう)などに焦点を合わせた広告などに利用される。

 ネットを頻繁に使わないような人でも、蓄積されたデータからの類推で、このデータベースにひも付けされる。「この商品を買った人は、こんな別の商品も買っています、と。恩恵はあるが、プライバシー問題も続く」

 一方で、これは政治にも生かせる、と鈴木さんは言う。「上から物事を決めるのではなく、ネットに発信されたデータを活用し、下からの民意をすくい上げる。そうやって議題設定をし、現実の議論で政策を決めていく。不可能ではないし、むしろすぐにやった方がいいと思っています」(編集委員・平 和博)

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