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〈メディア激変71〉逆境に立ち向かう新聞―5 先駆者・産経の試み

2010年7月9日17時33分

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写真開始から半年後にサービスを無料にしたものの普及しなかった電子新聞「E−NEWS」の受信器

 新型情報端末「iPad」で産経新聞の紙面を読めるアプリケーションソフト「産経新聞HD」のサービスが、5月28日に始まった。iPadが日本で発売された当日、紙面データの配信をスタートさせたのは産経だけだった。購読料は30日間1500円。新型携帯電話「iPhone」で見られる紙面イメージは当面、無料のまま。整合性よりも機動性が優先された。

 2006年に産経新聞社から分社化された産経デジタルは、ニュース配信や電子新聞などの運営を担う。

 近藤哲司社長(50)は、業界で一番乗りだった電子新聞への進出について「新聞の部数が他の全国紙を下回り、本業以外の収益も少ない。部数が中期的に落ちていくのが避けられないならば、環境の変化に敏感に対応していこうという判断だった」と説明する。しかし、近藤社長が「死屍(しし)累々の歴史」と表現する厳しい道のりが待ち構えていた。

 1996年、世界初の放送・携帯型電子新聞サービスとうたい有料の「E―NEWS」を始めた。放送波のすき間を使って送る紙面データを専用受信器で受けプリントアウトする仕組みだった。当初、受信器が約4万円、受信料は3カ月4050円。普及せず2年後に終わった。

 01年には、パソコン向けに紙面イメージを送る電子新聞「ニュースビュウ」に月額1995円で再挑戦した。産経が販売されていない九州や北海道での契約にも期待をかけた。だが、高速大容量の通信網がまだ広まっておらず、データ読み取りに時間がかかった。価格の高さもあり、数千部にとどまって05年3月に撤退した。

 しかし、試みを続ける。7カ月後、月額315〜420円と価格を8割前後安くした電子新聞「ネットビュー」を始めた。過去1週間から1カ月の紙面や動画を見られるようにもした。ただ、部数は1万部前後にとどまっている。

 次に見据えたのはパソコン以外の端末。08年12月、画面が鮮明な「iPhone」に実験と位置づけて配信、無料で紙面を読めるようにした。予想を上回る反響があった。

 ブログで楽しむ情報サイトと銘打ち06年に始めた「iza」は、ウェブ・オブ・ザ・イヤー新人賞に選ばれた。編集局長をネタにする型破りな記者ブログがデスクを通さずに発信される。この方針を提唱したのは「iza」を設計したIT企業チームラボの猪子(いのこ)寿之(としゆき)社長(33)。新聞を読んでいないと公言、「社内の偉い人間ではなく利用者の支持で決めていく」と主張する猪子氏の起用は住田(すみだ)良能(ながよし)・産経新聞社長(65)が決断した。(編集委員・川本裕司)

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