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〈メディア激変79〉逆境に立ち向かう新聞―13 地域の情報をすべてつかむ

2010年7月23日17時40分

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写真紀伊民報制作部の高井敬典さん(38)は生活情報サイト「キーライフ」のデザインや管理を担当する=和歌山県田辺市の紀伊民報本社

 毎日午前11時ごろになるとグルメサイトの情報が次々に更新される。ある飲食店サイトには15日、「昨夜の雷はすごかったですね しばし稲妻の美しさに見入ってしまいました」の書き出しで、日替わりランチのメニューが更新された。グルメ情報は地方夕刊紙、紀伊民報(和歌山県田辺市)が運営する生活情報サイト「キーライフ(KiiLife)」の人気コンテンツの一つだ。

 紀伊民報のサイトはキーライフのほかニュースサイトの「アガラ(AGARA)」、地域交流サイト「みかん」と三つある。そのうちキーライフは地元の飲食店や物販店、美容院、不動産、中古車販売など218店が有料で参加する生活情報サイト。03年にオープンした。店舗の初期登録料は1万5750円〜4万2千円、月額運営費は3150円〜1万7325円。

 登録した店は携帯電話やパソコンで情報を更新したり、メールマガジンを発行したりできる。この更新システムは紀伊民報がつくり、登録店に提供している。不動産の出店業者は、紀伊民報が用意した検索システムを利用するため登録料や運営費が高い。登録店からの収入で運営しているが、ウェブ事業担当の長瀬稚春制作部長(53)は「サイト制作者らの人件費をようやくまかなえるようになった」と言う。

 グルメや不動産、中古車などでは全国展開する大手情報サイトがある。だが、大手が田辺市周辺で加盟店を集める前に紀伊民報が先手をうち、主要な店はキーライフに登録。住民のアクセスが増えるにつれて、新たな店が登録するという好循環につながった。

 キーライフへのアクセス数は08年に月15万ページビューだったのが今では月30万ページビューに倍増した。地域住民にとっては身の回りの生活情報を探すには大手サイトより役に立つ存在になったのだろう。

 「地域の情報の独占者になるつもりで事業を進めている」(長瀬部長)。地域に密着した地方紙の強みをウェブ事業でも生かす考えだ。

 紀伊民報のウェブ事業は「紙」とも連携している。金曜日付の紙面にはキーライフ面がある。紙面を見た人をウェブに誘導することを狙う。09年2月にはフリーペーパー「KiiLiFEプラス」を創刊し、ウェブと「紙」の連携を強化した。

 紀伊民報の徹底した「地べた主義」は、既存のメディアがネットに翻弄(ほんろう)される時代に生き残る一つの解かもしれない。どの新聞、サイトにもない情報を集中的に集める――。それが読者を引きつける。(編集委員・安井孝之)

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