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〈メディア激変78〉逆境に立ち向かう新聞―12 「地べた主義」で生き抜く

2010年7月23日17時39分

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写真地方夕刊紙「紀伊民報」(和歌山県田辺市)の1面は全国紙にはないきめ細かな地方ニュースで埋められている

 参院選の2日後、13日の1面トップもやはり地方ニュースだった。和歌山県田辺市の山間部(旧大塔村)の地域住民が協力して市街地に産直店をオープンするという。和歌山県南を販売エリアとする夕刊紙「紀伊民報」(本社・田辺市)の紙面は地元の情報であふれている。

 来年で創立100年になる。発行部数は3万8千部、販売地域では7割のシェアを占める。人口が減り、最近では部数は微減だが、シェアは落としていない。小山洋八郎社長(67)は「昔は全国紙との併読が多かったが、不況のためか全国紙をやめて、月額1530円のウチだけ取るという傾向がみえる」と言う。

 過疎地を販売エリアに抱え、先行きに不安が募るのは事実だが、石井晃編集局長(65)は「インターネットが普及した結果、実は地域に密着した情報で全国紙とも勝負できるようになった」と言い切る。

 地方の夕刊紙である紀伊民報は速報性ではもともと弱点があった。プロ野球や大相撲の結果はすでに全国紙の朝刊に載っている。株式市況欄もない。スポーツや株価に興味のある読者は全国紙を併読するしかなかった。

 しかし、インターネットで国内外の情報を即座に取れるようになった。その差は東京も地方もない。「この地方でも株などに興味がある人はネットを使っている」(石井局長)。インターネットのお陰で、速報性で劣るという地方紙の弱点が相対的に目立たなくなったのだ。

 紀伊民報の記者は26人。同じエリアに全国紙は1人か2人。きめ細かな行政の情報、街の移り変わり、地域の話題などは全国紙に負けるはずがない。記事を通じて、住民とのパイプも太く短くなる。朝日新聞編集委員から04年に紀伊民報に移った石井編集局長は着任当時、地域の人からの情報提供の多さに驚いた。全国紙にはないことだった。「珍しい花が咲いている」「近所の人が取り調べを受けている」……。取材のヒントが舞い込んできた。

 ネット上の情報は膨らむばかりだ。だが、きめ細かな地域情報となると「全国紙もテレビも取材をしていない。すっぽり抜け落ちている。そこに勝負をかけるチャンスがある」と石井局長はみている。

 集落単位でそこに住む人と生活を紹介した特集「ふるさと探訪」を129回、約2年半続け、今年の1月からは小学校区ごとに活躍する人たちを紹介する「郷土の灯」を週1回始めた。地べたのニュースに新聞の活路を見いだそうとする姿勢は、紀伊民報のネットビジネスにも貫かれている。(編集委員・安井孝之)

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