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〈メディア激変88〉ラジオの実験 旧媒体の可能性を再発見

2010年8月6日17時20分

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写真ネットを使い、放送と同じ内容が配信されているIPサイマルラジオのパソコン上の画面(関西地区)。サービス名はラジコ

 「広告収入が落ち続けてきたラジオに、生きる道が見つかった」。ある在京ラジオ局の首脳は、パソコンから流れるラジオ番組を聞きながらつぶやいた。

 3月15日から東京と大阪の13局で始まったIPサイマルラジオの実験は、インターネットでラジオを聞けるようにした。高層ビル乱立のため都心部のビルで聴き取りにくくなったラジオ復権の試みは、予想以上のアクセスがあった。

 総聴取回数は5月9日までに2964万回。利用者2万2千人に対する4月のアンケートの結果では、44%は今まで地上波ラジオを聞いていなかった。印象については「音質がよい」77%、「難聴取の解消」66%。今後についても「ぜひ利用したい」が92%に達した。

 ラジオ局の営業局員が企業の宣伝部に「いま聞いてください」と番組を売り込もうとしても、肝心の放送は雑音だらけ。鉄筋コンクリートのマンションは電波を遮断し、パソコンが近くにあるとザーという音が入る。ラジオを取り巻く環境は悪くなるばかりだった。

 毎日放送の豊田修二取締役・メディア戦略室室長(60)は「いまの20代では40%がラジオを聞いたことがないという調査結果もあり、危機的な状況」と話す。毎日放送ではラジオの09年度の売上高は05年度に比べ27%減った。関西地区の総世帯聴取率は昨年12月で6.2%と、1年間で0.8ポイント落ち込み過去最低だった。

 ネットとラジオの親和性に着目した今回の試みは起死回生策だった。TBSラジオの加藤嘉一社長(54)は「ラジオを聞ける機会を広げ、大きな可能性があると感じた」と語った。NHKのほか、札幌、名古屋、福岡などにある民放のAM、FMが参加を検討している。

 8月末までの予定だった試験配信は3カ月ほど延長される見込み。運営組織の形態や著作権処理、システムの支援態勢を固めたうえ、実用化をめざしている。IPサイマルラジオ協議会の幹事代表をつとめる電通関西支社の三浦文夫グローバル業務室次長(52)は「広告主からは新しいメディアという認知が出てきており、ビジネスを展開できるのでは」と話す。ラジオショッピング番組中にパソコンで商品を映し出したり、ラジオCMに合わせてバナー広告を表示したりすることも検討されている。

 4月に神戸の「Kiss―FM KOBE」が民事再生法適用を申し立て、6月には名古屋の外国語FM「愛知国際放送」が9月末に停波すると発表した。ラジオ業界に差した一筋の光といえるサイマルラジオへの期待は大きい。(編集委員・川本裕司)

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