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〈メディア激変122〉課金、海外の挑戦―4 死亡記事、街の外は有料に

2010年10月1日17時33分

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写真ランカスター新聞社のオンラインエディター、アーニー・シュライバーさん=米ランカスター、藤写す

 米ニューヨークから列車で西南へ2時間40分。開拓時代の生活習慣を厳格に守るプロテスタントの一派、アーミッシュの街で知られるペンシルベニア州ランカスターで、新聞社のネット課金としてはユニークな試みが始まった。

 部数約8万部の地元紙「インテリジェンサー・ジャーナル/ランカスター・ニュー・エラ」を発行する、創立216年のランカスター新聞社が、自社サイトで有料にしたのは、街の人々の死亡記事だ。

 米紙の死亡記事は、人となりを子細に書くスタイルが特徴だ。特に地元紙の場合、地元の市井の人々により焦点を当てる。これまではサイト上で誰もが無制限に無料で見られるようにしていたが、7月からは、街の外からのアクセスに対し、月に8本以上閲覧すると月1.99ドル、年間だと19.99ドルを課金するようになった。

 オンラインエディターのアーニー・シュライバーさん(62)は昨年5月、ワシントンで開かれたメディア関連の会議で、メディアにネット課金技術を提供する「ジャーナリズム・オンライン(JO)」の話を聞き、興味を持った。

 まずは自社のサイトで、どんな記事がよく読まれているか調べてみた。するとサイト上では、死亡記事が3番目によく読まれていることがわかった。しかも、街の外から見に来る割合が半数以上と高く、毎日チェックするなど頻度も高かった。「恐らく街の出身者が、地元の友人について知りたいために見ているのだろう」とシュライバーさん。

 金融危機以降、広告収入は落ち込んでいる。「ウェブに親しむ人がシリコンバレーのようには多くない街では、ネット広告を増やすのも難しい」と最高経営責任者(CEO)のハロルド・ミラー・ジュニアさん(68)は言う。

 地元唯一の新聞社として、地元の人の死亡記事は、競合相手のいない独自コンテンツ。同じ内容が載る紙の新聞を普段買ってくれる地元の人には課金しづらいが、街の外の人は、サイト上で無料で記事を読むだけ。ある程度は無料にしたうえでの課金なら、払ってくれるのでは、と読んだ。「大いなる実験」の狙いも込めて昨秋、有料化を決め、JOの技術を採り入れた初の事例となった。地元のスポーツ記事への課金も、今後の検討対象だ。

 実は死亡記事は、数年前から自社の記者ではなく、複数の葬儀社や、時に遺族が書いている。シュライバーさんによると、「記者が伝統的な体裁に従って書いていた時より、はるかに個人的な話が盛り込まれ、実は読者に喜ばれている」のだそうだ。(藤えりか)

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