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〈メディア激変123〉韓国から―1 ツイッター作家、紙にこだわる

2010年10月1日17時33分

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写真近著のサイン会でファンとの記念写真に応じる李外秀さん(左)=9月11日、韓国・城南市内、隈元写す

 あの金妍児(キム・ヨナ)が、2位争い。といっても、フィギュアスケートの話ではない。

 韓国でツイッターをやっている人の、フォロワー数の順位だ。2位に10万の大差をつけて、40万人が読者登録する一番の人気者は、誰?

 答えは作家の李外秀(イ・ウェス)さん(64)。韓国北部の山奥で小説や随筆を書きながら、テレビやラジオでの歯にきぬ着せぬ物言いでも知られる。

 その李さんがソウルに近い城南(ソンナム)市内の書店でサイン会を開くというので、会いに行った。

 近著は、ツイッターの文章を集めたものだ。題名は「我不流時不流(アブリュシブリュ=私が流れないと時も流れない)」。「自分が変わらないと世の中も変わらない、と若い人に伝えたかった」と言う。ツイッターは昨春からだが、パソコン通信時代から、新しいメディアを「習作の空間」にし、若者との交流の場にもしてきた。ツイッター時代になって、どんな変化があったのだろう。

 「字数制限が緊張感を生み、推敲(すいこう)を重ねるうちにメッセージが鮮明になる。まだ過渡期だけど、いずれ日本の俳句のような、短くて文学性の強いものが出てくるんじゃないかな」

 確かに李さんの本には、短さの中に味のある文章が多い。「上手は頭の中が一つの考えでいっぱいで、下手は頭の中が一万の考えでいっぱいだ」「あなたの恋がよく揺れるのはそれが本物じゃないからだ」「音にも影がある」……。

 ツイッターは、参加者が増えるほど水準が高まり、感情的な中傷などはやがて消えていく、と李さんは言う。「互いに影響しあい、良い方向へ行こうとする。これまでのネットワークサービスの中で、最も質が高い気がします」

 それでも、紙の本にこだわるのはなぜか。

 「ツイッターはコメントが次々に上がって来て慌ただしいし、昔のものを探すのは大変。本は落ち着いて読めて、ゆっくり考えることができる。内容も一目瞭然(りょうぜん)ですからね」

 どうやら、この人の中では新旧のメディアは断絶せず、つながっているらしい。

 サイン会に並ぶファンの思いはどうか。

 「ツイッターは流れ去るもの、本は紙の感触を味わいつつ読み返すもの」と言うのは、大学生の金宥美(キム・ユミ)さん(21)。李さんの文章をツイッターでも読みたくて、iPhoneを買った。

 会社員の宋光勲(ソン・クァンフン)さん(41)も、iPhoneで李さんの文章を読む。日本の友人とのツイッターも楽しみだ。「私は韓国語、彼は日本語で書き込む。でも、自動翻訳ソフトで自国語で読める。日本がずいぶん近くなった気がします」

 似ているようで、どこか違う。そんな隣国のいまを報告したい。(編集委員・隈元信一)

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