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〈メディア激変129〉韓国から―7 根づいた無料紙文化

2010年10月15日17時56分

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写真午前9時ごろの地下鉄。手前の3人が読んでいるのはいずれも無料紙だ=ソウル市内、隈元写す

 ソウルで朝の地下鉄に乗ると、韓国社会の変化が見えてくる。

 20年ほど前は、全国紙を読んでいる人が多かった。その後、スポーツ紙の全盛期があって、6、7年前から無料紙(フリーペーパー)が圧倒する時代になった。最近はスマートフォンに夢中になっている人も増えたとはいえ、無料紙に読み入る姿がまだまだ多数派だ。

 早朝、おじいさんやおばあさんが駅にやって来て、無料紙を新聞台に置いたり配ったり。それを通勤客が電車の中で読み、降りる前に網棚に載せていく。すると、また別のおじいさんかおばあさんがやって来て回収し、古紙市場へ。

 02年に創刊され、無料紙ブームのきっかけをつくった日刊紙「メトロ」の劉鍾奎(ユ・ジョンギュ)理事(41)によれば、配布員は日に3時間くらい働いて月給は30万ウォン(約2万2千円)という。高齢者の貴重な収入の場になっているわけだ。

 「既存の新聞とはずいぶん違います」と劉さん。収入はすべて広告だ。広告が多いと紙面が80ページにもふくらみ、少ないと薄くなる。メトロの公称部数は44万部(09年)だが、季節や天気で変動が激しい。月曜や好天の日は多く、バカンスの季節や雨の日は落ちる。

 月25億ウォンの経費のうち、紙代40%、印刷代25%、配布代15%で、人件費は1.5%。「人が少ないから競争力がある」と劉さんは言う。

 それでも記者が25人いて、独自のニュースを追い、芸能人の結婚などで特ダネを飛ばす。スウェーデンに本部を置き、19カ国で発行する「メトロ」のネットワークに入っていることもあって、国際面の充実ぶりもなかなかだ。

 昨年の売り上げは325億ウォンで、利益は25億ウォンだった。03年創刊の「フォーカス」と首位を争っている。そのあとを「AM7」「ノーカットニュース」などが追う。

 劉さんは「ブームは過ぎたが、9紙から2紙が廃刊して7紙に落ち着き、安定期に入った」と見ている。「広告をインターネットなどに奪われて厳しい時代ですが、すき間をねらうにはいい媒体じゃないですかね」

 韓国新聞協会によると、08年の無料紙の発行部数は299万部。有料日刊紙の838万部には及ばないが、スポーツ紙の108万部をしのぐ。無料紙の登場でスポーツ紙が壊滅的打撃を受けた、というのが業界のもっぱらの声だ。

 今後は、新聞も読めるモバイル端末などがライバルになるだろう。(編集委員・隈元信一)

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