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〈メディア激変131〉韓国から―9 黒字になったけれど

2010年10月15日17時57分

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写真「写真家たちの作品を載せる『イメージプレシアン』も始めた」と説明する朴仁奎さん=ソウル市のプレシアン、隈元写す

 韓国のインターネット新聞界を引っ張ってきたオーマイニュースでさえ赤字なのに、昨年初めて黒字になったネット新聞がある。

 その名は「プレシアン」。01年に設立され、オーマイニュースの「市民記者」に対し、プロの記者や学者ら「専門家」を看板にしてきた。「深層報道」「冷静な分析」といった定評がある。そんなお堅い会社がどうやって黒字に?

 「ネイバーのおかげ」と朴仁奎(パク・インギュ)代表(54)。この連載の127回で報告したように、ポータルサイト最大手のネイバーは昨年、トップページに並ぶ新聞などの記事見出しをクリックすると、その社のサイトへ飛ぶようにした。それでプレシアンはページビュー(閲覧数)が1日100万に増え、広告収入も増えたのだった。

 だが、これで逆に危機感が強まった。生殺与奪の権をネイバーに握られていいのか。収入の8割を占める広告依存から抜け出すために、できることを積極的にやろう――。

 広告以外の収入は、記事などのコンテンツ販売や、月に最低5千ウォン(約380円)を払う有料会員の会費だ。「会費だけでやるとしたら、3万人は必要」と朴さんは言うが、今のところ2千人。この秋、会員に無料で送る文化雑誌を発行し、会員募集に力を入れる。

 出版業界とのつながりも強みだ。連載などから100冊の本が生まれ、今年から印税の一部が入るようになった。この夏始めた「ブックレビュー」は、著者インタビューや、著名人の朗読が人気。書評に著者が答えて論争になるという、いかにも韓国らしい現象も起きている。

 プレシアンは、新聞記者たちがつくった。朴さんは京郷新聞出身だ。「韓国は保守と進歩の葛藤(かっとう)があまりに激しい。あらゆる政治勢力から独立して、一級の専門家たちが深みのある記事を書く新聞が必要だと考えたんです」

 その初心を貫いてきた。そう思う一方で、ネット新聞全体を見る朴さんの目は悲観的だ。

 何より権力との関係が「相互独立的でなかった」。進歩系の金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は大手3紙と仲が悪かった。で、盧武鉉はネット新聞に近づく。やがて保守系ネット新聞も出てきて、その流れで李明博(イ・ミョンバク)政権が誕生。進歩系ネット新聞は政府広告を切られ、経営に苦しんでいる。

 盧武鉉批判もしたプレシアンは、その政権後半から政府広告が来なくなったという。

 今後、どう生きていくのか。朴さんは言う。

 「社会全体を動かせなくても、ゲリラのようにやっていくしかない。正規軍的な本来の言論は、やはり新聞や放送が担うべきだと思うんですがねえ」(編集委員・隈元信一)

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