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〈メディア激変132〉韓国から―10 記者ブログの明暗

2010年10月15日17時57分

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写真自分のブログ「軍事世界」に会員がアップした写真を説明する龍源さん=ソウル市内、隈元写す

 ネット時代に新聞はどう活路を見いだすか。オーマイニュースが台頭したころ、韓国紙が目をつけたのがブログだった。

 最大手の朝鮮日報は04年8月、自社サイトに200の記者ブログを立ち上げた。同社によれば、いま358。ほぼ全員の記者がやっていることになるが、活発なのは20くらいという。その中に、おばけのようなブログがある。

 軍事専門記者、ユ龍源(ユ・ヨンウォン)さん(46)の「軍事世界」。1日のページビューは100万で、前回紹介した有力ネット新聞のプレシアンに匹敵する。5万人いる会員の投稿もあふれ、「今や軍事ポータルサイト」と本人が涼しい顔で言う。

 世界の軍艦や戦闘機の「写真資料室」。自身のコラムのほか、防衛政策や北朝鮮の核実験の討論コーナー、軍事専門紙「国防日報」などへのリンク……。掲示板の書き込みが15万、投稿写真が60万、動画が1万5千はあるそうだ。

 会社に言われて始めたわけではない。開設は01年8月、韓国軍の広報担当に勧められたのがきっかけだった。「このブログがあることで朝鮮日報も訪問者が増える。だから、自由な活動を認めてくれるのでしょう」とユさん。

 仕事に役立つこともある。例えば3月に起きた韓国哨戒艦の沈没事件で、機雷が原因という説が一時流れた。すると、会員がその機雷の写真を「軍事世界」に。それを紙面に使った。

 「会員がアップしてくるコンテンツは、朝鮮日報の考えと違っても文句を言われない。ほかの記者がブログで社論と違う意見を書いて、ライバル紙に攻撃されたことはありますが」

 似たことは他社でもある。元中央日報記者、李女英(イ・ヨヨン)さん(28)の場合はこうだった。

 08年5月のソウル。ろうそくを手にした市民の集会が続いていた。米国産牛肉の輸入制限撤廃を決めた政府への抗議だ。群衆の中を歩いた李さんは「朝中東(チョジュンドン)購読拒否名刺板」の前にたたずむ。政府を支持する朝鮮日報、中央日報、東亜日報に怒る人々の名刺が張られていた。

 「私の新聞社と民心は離れてしまった」。そんなことを李さんは自分のブログに書いた。そして上司に「あなたは組織の論理に合わないから、退社してもらう」と通告されたという。

 「ただ若者の一人として参加し、観察したかっただけ。お祭りみたいな集会で、政治的背景は感じなかった。でも、私も組織への理解が足りなかった気がするし、中央日報で成長できたからこそ、独り立ちできたと思っています」

 そう語る李さんはいま、韓国では珍しい「フリーランス記者」として活躍している。(編集委員・隈元信一)

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