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〈メディア激変133〉韓国から―11 政権側とぶつかる放送現場

2010年10月22日17時56分

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 韓国の放送界はどんな様子か。旧知の放送人を訪ねたら、自身が騒動の主になっていて、いかにも疲れた表情でこう言うのだった。

 「こっちもミスがなかったわけじゃない。でも番組で訂正したし、裁判の一審判決も無罪。権力や利益集団を批判して国民の信頼が厚い番組を、権力側がつぶしにかかってるんです」

 地上波の3大テレビ局の一つ、MBCのプロデューサーで、時事番組「PD手帳」の司会をしていた宋日準(ソン・イルジュン)さん(53)。いまはその番組をはずされ、外注番組を担当している。

 農政担当の大臣らへの名誉棄損で起訴されて裁判にまでなったのは、08年4月29日の「PD手帳」。政府が輸入再開を決めた米国産牛肉の安全性を問う内容だった。3日後、ろうそくを持った市民のデモや集会が始まり、夏まで続く中で、番組への非難が高まっていった。

 特に厳しかったのは大手3紙だ。社説だけ見ても、「『PD手帳』制作陣、意図的に『狂牛病』歪曲(わいきょく)」(朝鮮日報)、「MBCは『PD手帳』懲戒して謝罪を」(中央日報)と容赦がない。今年に入り、一審で無罪になると、「あきれた判決」(東亜日報)とばっさり。

 どちらに理があるのか、番組を見ないと即断できない。だが、08年2月に保守系の李明博(イ・ミョンバク)政権になってから、労組も強いテレビ局と政権側がぶつかる場面が増えたことは確かだ。

 同じ08年夏、ニュース専門局YTNでは、李大統領の選挙でメディア対策を担った人物が社長になるというので、反発する労組員たちが株主総会に乱入する事態になっていた。

 やがて大量解雇に。その中に、大統領府を担当する政治部記者だった禹長均(ウ・ジャンギュン)さん(46)もいた。「大統領の側近が社長で、公正な報道ができるでしょうか。民主化が定着したと思っていたら、焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)の時代に逆戻りですよ」

 禹さんはその後、韓国記者協会の会長になった。新聞や放送の160社、8千人の記者が言論の自由を守るために集う。今年、ネット新聞のプレシアンやオーマイニュースの記者が会員に加わった。「今や彼らも影響力のあるジャーナリスト。一緒に闘う仲間です」と禹さん。

 3大紙がテレビと対立するのは、自らテレビ局(総合編成チャンネル)を持てば、直接のライバルになるから。政権を支持するのは、新局に選んでほしいから。そんな見方もある。

 新局でも記者が働く。禹さんの「仲間」も増えるのだろうか。(編集委員・隈元信一)

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