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〈メディア激変141〉米メディアの模索―1 米有力2紙、西海岸で場外戦

2010年10月29日18時23分

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写真「ベイ・エリア」と1面に掲げたニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナル

 米西海岸のサンフランシスコに住む40代の男性会社員は、いつの間にか、ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が毎朝、自宅の玄関前に配達されていることに気づいた。購読を申し込んでもいないのに、だ。

 水曜と金曜には、1面の題字のそばに「強化したベイエリア(サンフランシスコ湾周辺)報道、中を見て」というシール。開くと、「サンフランシスコ市役所の大広間をダンスに開放」「地元球場の隣の湾から球音を楽しむファン」などといった地域密着の記事が、見開き2ページに載っている。「米東部が本拠地のNYTが、遠く離れた西海岸で営業攻勢をかけている」。男性は驚いた。

 NYTは2009年10月半ば、本社のあるニューヨーク以外の話題をたくさん盛り込んだ初の地域版を、サンフランシスコで出した。

 地域版を仕掛けるのはNYTだけではない。

 「野原を歩き、野草を摘んで食べるのがサンフランシスコで人気」「地元オペラ、地元球場の大画面を使って無料で同時放送」

 こちらは、同じニューヨークに本社を構える経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が毎週木曜に出しているサンフランシスコ地域版の記事だ。NYTが地域版を出し始めた20日後に参入した。

 経済紙らしく、地元オペラの記事一つをとっても、動員見通しの平年との比較や、投資費用など数字を明記する。とはいえ、基本は文化やスポーツ、市民活動といった一般ニュース。企業の動向や景気情勢を本来の売りとする経済紙にあって、異色の欄と言える。

 「率直に言って、サンフランシスコは広告需要が大きく非常にもうかるからだ」。WSJのロバート・トムソン編集局長(49)は言う。

 シリコンバレーを始め、有力なIT企業が多い土地柄。平均時給はニューヨークを上回るほどだといい、購買力も高い。特にビジネスマン層を相手にするWSJの場合、この地域で9万2千人以上いる読者の世帯年収は、平均15万4千ドル(約1260万円)以上に上るという。その一方で、最大の地元紙サンフランシスコ・クロニクルは部数の落ち込みが著しく、広告収入の減少に悩んでいる。NYTとWSJにとっては、「すき間」を突くチャンスというわけだ。

 「重要な競合相手のWSJには、先を越されたくなかった」。NYTの地域版担当エディター、ジム・シャクターさん(51)はライバル心を隠さない。

 西海岸で「場外戦」を始めた米有力2紙。だが、展開の仕方は、少し違う。(藤えりか)

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