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〈メディア激変142〉米メディアの模索―2 経済記者が自ら地域密着記事

2010年10月29日18時24分

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写真WSJのトムソン編集局長。翌日の紙面割りが大画面に映る=ニューヨークの本社、藤写す

 米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)と、同じ発行会社の下で経済記事を配信する通信社部門のダウ・ジョーンズ。そのサンフランシスコ支局の朝は、いずれも早い。

 本社のあるニューヨーク(NY)やNY市場は、時差のため3時間早く動き始める。紙の新聞向けの締め切りや会議はNY時間。間に合わせるため記者会見や取材を素早くこなし、記事を出さなければならない。アップルにグーグル、ヤフーといった著名なシリコンバレー企業の動きをめぐり、特ダネ競争も厳しい。

 そんな経済記者たちが、2009年秋からさらに忙しくなった。地元楽団や食の話、ボランティア活動など、担当分野とかけ離れた地域密着の記事を、毎週2ページのWSJ地域版用に取材して書くよう求められるようになったためだ。

 WSJは今年4月、おひざ元のNYでも都市圏版を発行。発祥の地ウォール街を飛び出し、国内最大のライバル紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が圧倒的に強い「NYの一般ニュース」を週6回出し、NYでの広告収入を増やしている。9月下旬には週末版を拡大し、NYTの看板の一つである書評欄を設けて対抗した。

 もちろん書くのは同社の記者だ。「普段書けない分野の記事を書けるのはプラスになる」と前向きに取り組む記者もいるが、客観的に見ると負担増だ。

 ロバート・トムソン編集局長(49)は「みんな楽しんでいるし、コスト負担もさほどでない。それよりジャーナリズムの質の問題だ。まじめな新聞にとって、コンテンツを下請けに出すのは不適切で信用リスクも大きい」という。

 「WSJは3年前から一般紙になった」と同紙の記者は肩をすくめる。ルパート・マードック氏率いるニューズ社がWSJ発行会社を買収したのは07年。NYTに特に対抗心を燃やすとされるマードック氏の意向を受け、WSJは政治や社会、国際などの記事を増やしてきた。

 買収を機に就任したトムソン編集局長は「ワシントンや中国、アフガニスタンで何が起きているかを報道するのは経済紙として極めて重要なことなのに、正直、かつてはうまくやってこなかった。地域情報も、経済や政治の動向を理解するうえで大切だ」と言う。

 その効果があってか、WSJは宅配とオンラインを合わせた購読者数で09年、長年トップだったUSAトゥデーを抜いて全米首位に。ネットの購読者数は100万人以上だ。今後はWSJとダウ・ジョーンズの統合を進め、「世界で支配的な地位」(トムソン編集局長)を狙う、と意欲を示す。(藤えりか)

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