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〈メディア激変143〉米メディアの模索―3 外注で拡張するNYT

2010年11月5日17時18分

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写真地域拡大をめぐりホワイトボードで議論を重ねるNYTのシャクターさん=ニューヨークの本社、藤写す

 昨年春、ニューヨーク・タイムズ(NYT)本社の編集局に営業部門の幹部が現れた。「主要都市で、部数を維持するか少しでも増やす戦略を考えられないか」。地域版の提案だった。

 NYTはその頃、急速に経営が悪化していた。金融危機後の広告収入の急減が響き、2008年12月期決算は2期ぶりの赤字。本社ビルを一部売却し、メキシコの富豪から融資を受けるなど、一時は存続危機説すら流れた。既に人員削減を経験していた編集局は提案に応じた。

 09年10月の地域版第一弾がサンフランシスコになったのは、「重要なライバル、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)も関心を寄せているとわかったからだ」と担当エディターのジム・シャクターさん(51)。翌11月には「非常に魅力的な市場」だというシカゴに乗り出し、今年10月29日にはテキサスにも打って出た。

 WSJとの違いは、取材・執筆を地元メディアに外注している点だ。

 サンフランシスコの地域版は、今年1月に地元で創設されたNPO報道機関ベイ・シチズンの記者たちが書いている。編集長はロサンゼルス・タイムズ紙などで働いてきたジョナサン・ウェーバーさん(49)。NYTはライセンス料を払い、編集を担う。当初はNYTの地元支局のデスクを中心に、支局記者やフリー記者が記事を書いていたが、6月に全面委託した。

 シカゴでは、地元紙シカゴ・トリビューンの元編集局長がトップを務める地元NPO報道機関と提携。広告営業も、高級車に限っては地元紙に委託している。テキサスでも、地元の新興NPO報道機関と組む。

 「外注する理由はコスト。NYTの記者にすべての主要都市をカバーさせる余裕はない」。NYTの戦略計画ディレクター、ティム・グリッグスさん(33)は言う。

 外注による拡張路線に、WSJのロバート・トムソン編集局長(49)は「(委託先の記者らは)価値観も違うから、問題に直面し、かえって高くつく」とみる。だがシャクターさんは、出資者の報道介入がないNPOなど、政党色がなく公正なメディアを見定めて外注していると説明。「NYTがどんな存在かは理解されている」ともいい、名門紙としての余裕を見せる。

 ただ、「これまで競合してきた各地の既存メディアは、我々との提携に慎重だ」とシャクターさん。地域拡大は、良質な新興メディアをどれだけ発掘できるかにかかる。(藤えりか)

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