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〈メディア激変144〉米メディアの模索―4 地元紙危機から生まれたNPO

2010年11月5日17時21分

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写真ベイ・シチズンのウェーバー編集長。来年は記者を増やす予定だ=サンフランシスコの本社、藤写す

 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の地域版をサンフランシスコで作っているNPO報道機関ベイ・シチズン。誕生した背景には、最大の地元紙の廃刊危機があった。

 老舗(しにせ)サンフランシスコ・クロニクル紙は昨年2月、親会社のハースト社から「リストラできなければ売却か廃刊」と突きつけられた。部数や広告収入の減少で経営が悪化したためだ。

 労組トップとして労使交渉に当たったカール・ホールさん(55)は同月下旬、地元の実業家で米証券大手リーマン・ブラザーズの元社長、ウォーレン・ヘルマンさんと朝食をともにし、「クロニクルを買収し、NPO化してくれないか」と持ちかけた。

 ヘルマンさんは市民活動に携わりながら、地元ニュースの減少を肌で感じていた。クロニクル買収には関心を示さなかったというが、地域報道の復興へ向け定期的に会うことになった。

 クロニクルはそのうち、ハースト社が早期退職手当の積み増しなどを示して労使交渉が妥結し、存続が決まった。

 だが、他の地元紙のリストラもあって、地元の記者数は往時の900人以上から半減している。「地域報道の空白を埋める、新しい報道機関を作ろう」。ヘルマンさんは自らの財団から500万ドル(約4億円)を出し、ベイ・シチズンの前身となるNPO組織を今年1月作った。

 この地域で経済取材の経験があるネットメディア元編集長のジョナサン・ウェーバーさん(49)を編集長にし、会長兼最高経営責任者(CEO)にはコンサルタント会社の米マッキンゼー社の元幹部を招いた。他の財団などからも寄付を集め、年50ドルからの個人会員も募る。

 NYTとの提携に注目が集まるが、5月に始めたサイトでの独自記事の発信に、より力を入れている。インタビューの動画や音声も載せ、今後はラジオやテレビへの配信も考えている。

 専属記者は20〜40歳代の15人。ワシントン・ポスト紙でピュリツァー賞を受賞した元記者を編集幹部に、クロニクルなど様々なメディアを経た記者が集まる。カリフォルニア大バークリー校ジャーナリズム学科の学生も、有給インターンとして取材する。地元医療メディアなどの外部記事も全体の4分の1ほど発信する。「市民のための記事が基本」とウェーバーさん。

 設立のきっかけを作ったホールさんはクロニクルを早期退職し、今はカリフォルニア・メディア従業員労組の地域代表を務める。「ベイ・シチズンの取り組みがうまくいくよう期待している」と話すホールさんは、地域報道全体の存続のため格闘中だ。(藤えりか)

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