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〈メディア激変145〉米メディアの模索―5 規模縮小で乗り切る地元紙

2010年11月5日17時23分

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写真サンフランシスコ・クロニクルのプロクター編集局長=サンフランシスコの本社、藤写す

 自らの経営危機が、ライバルとなるNPO報道機関の誕生をもたらしたと言えるサンフランシスコ・クロニクル紙。発行から145年になる最大の地元紙の本社を、この夏訪ねた。

 サンフランシスコ中心部にある3階建ての自社ビルに入り、1部1ドルの同紙を買った。1面トップは、原油汚染のメキシコ湾で働くサンフランシスコの専門家らの話。筆者は外部のフリー記者だ。写真は親会社ハースト傘下の他の新聞から。1面のほかの記事3本は自社の記者が書いているが、次のページは見開きすべてがAP通信の記事。その次はニューヨーク・タイムズなど提携紙の記事が並ぶ。

 受付の女性に3階に行くよう促された。1、2階にはIT企業が並ぶ。受付の女性は「以前は全フロアがクロニクルだった」というが、2005年から続いた人員削減で、社員が大幅に減り、使わなくなった3分の2を貸している。

 同紙は広告収入の激減などが響き、08年に年間赤字が5千万ドル(約40億円)以上になった。09年2月にはハーストが売却か廃刊を示唆したが、今は収支が改善しているという。

 それを支えているのが「規模の縮小」だ。記者やエディターは165人。「私が入社した03年には450人いた」と、3階で出迎えてくれたスティーブン・プロクター編集局長(53)は言う。当時4、5人いたワシントン駐在の記者も、今は1人。海外特派員は「入社当時すでにゼロ」だった。近郊の支局もいくつか閉めた。理想は記者250人態勢だが、「全国紙になる気はなく、世界の視点を持つ地域新聞であることが使命。だから提携記事が助けになる」。

 朝の紙面会議が始まった。地域の教育に化学物質による人体汚染、地元の大リーグの試合……。各エディターが順に記事を説明する。「化学の記事はいい話だね。1面にいいかも」とプロクターさん。約15分で終了した。出席したエディターは11人。かつては倍ほどいたそうだ。

 人員削減だけではない。09年には多くの新聞がためらう値上げに踏み切り、週購読料は約6割アップの7.75ドルに。読者の少ない不採算地域では宅配をやめ、紙面サイズも小さくした。だが読者離れを招き、部数は09年4〜9月には米主要紙で最大の減少幅となる前期比26%減。今年3月には往時の約半分の24万部に減った。

 それでも「地域ニュースを求める地元のために、新聞を存続させること自体が大事だ」とプロクターさんは言う。この11月には携帯端末のiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)への有料の記事配信を始める。新たな収入源に期待をつなぐ。(藤えりか)

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