現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. メディア激変
  5. 記事

〈メディア激変146〉米メディアの模索―6 地元の調査報道の減少補う

2010年11月5日17時25分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真カリフォルニア・ウオッチのデービス記者。州知事選の候補者の発言を追ってきた=バークリー、藤写す

 米紙サンフランシスコ・クロニクルの本社を訪ねた翌日。同紙1面を「共和党の上院選候補、地球温暖化(防止の)議論に背を向ける石炭会社から献金」という記事が飾った。筆者は同紙の読者になじみのランス・ウィリアムズ記者(60)。本塁打王バリー・ボンズ選手の薬物疑惑を追い、その米連邦大陪審での非公開証言をスクープ。情報源を大陪審で明かすよう求められ、拒んで収監寸前になった気骨の記者だ。

 今はしかし、署名の隣に別のメディア名が記されている。「カリフォルニア・ウオッチ(CW)」。2009年夏にサンフランシスコ近郊バークリーで産声を上げた調査報道NPOだ。

 ウィリアムズさんは長年勤めたクロニクルで調査報道チームの一員だったが、リストラの一環でチームは解散。それを機に09年にCWに移り、以来、CWのシニア記者として、同紙の1面に計5本貢献している。「CWは、財政上の理由から縮小した報道機関に、調査報道を提供する存在になっている」とウィリアムズさん。

 CWの母体は、世界でも古参の調査報道NPO「調査報道センター」。1977年の発足以来、バークリーを拠点に全国のメディアに記事を提供してきたが、地元の調査報道の衰退を憂え、地域密着の記者集団を別途立ち上げた。学生インターンを含む記者十数人はいずれもツイッターのアカウントを持ち、読者から意見を請う。記者は動画も駆使し、ブログも発信する。

 さらに読者から提案や意見を直接聞こうと、今年1月と10月には「開かれた編集局」を企画。州内の無線LANつきカフェに記者が散らばった。詳しい居場所は事前にサイトで、記者の顔写真つきで紹介。来てくれたうちの1人に携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)タッチ」を進呈、とうたい、参加者を集めた。

 6月には選挙候補者の発言を記すサイト「政治一語一語」を始め、まずは州知事選の民主、共和両候補が何を公約しているかを記載。有権者が、医療保険改革などテーマごとに発言を検索し、遊説先も地図で確認できるようにした。読者から、候補者の音声や動画も募っている。

 発案したのは、CWで政治とカネを担当するチェース・デービス記者(27)。テキサスやアイオワの地方紙の調査報道担当を経て、09年8月にCWに転職した若手だ。「昔ながらの組織構造の旧来型メディアだったら、こういう企画をやるにも、たくさんのエディターに話を通さなければならなかった。でも、ここではまず、『じゃあやってみたら』。それが魅力」とデービスさん。素早さを利点に、新しい取り組みを続けたいという。(藤えりか)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介