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〈メディア激変147〉米メディアの模索―7 調査報道で注目、プロパブリカ

2010年11月12日17時30分

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写真プロパブリカのスタイガー編集長。報道対象は米国だが、記者は海外にも飛ぶ=ニューヨーク、藤写す

 「調査報道に年間1千万ドル(約8億円)出したい」。米紙ウォールストリート・ジャーナルの編集局長として定年を控え、「あとは大学で教えて執筆活動かな」と考えていたポール・スタイガーさん(68)は4年前、サンフランシスコの銀行家サンドラー夫妻に持ちかけられた。

 そうして誕生したのが、ニューヨークが拠点の全米最大の調査報道NPO。ハリケーン・カトリーナを巡る記事で今春、ネットメディア初のピュリツァー賞に輝いたプロパブリカだ。

 夫妻は、スタイガーさんがロサンゼルス・タイムズ紙のエディターをしていた1980年代からの取材先。金融業で富を築く一方、「民主主義のためジャーナリズムが大事だと考えてきた」という。費用がかかる調査報道を既存メディアが次々と削る現状を見て、資金面で支えたいと考えた。意を受けて、スタイガーさんがNPO化計画を練り、夫妻の財団の資金で08年1月に発足。スタイガーさんが編集長に就いた。

 資金の約3分の2を報道に充てている。記者32人には、「既存メディアに負けない給料」を出す。取材手腕やIT関連の知識などを学び合えるよう、記者の年齢層も20〜60代と幅広い。

 これまで50〜60の新聞やテレビ、ラジオに記事を提供、一緒に取材もしてきた。だが、「代金」はとらない。「大事なのは記事が反響を呼ぶこと。最も反響が大きくなりそうなメディアに載せる。料金交渉をしていたら、締め切りが過ぎて機会を逸してしまう」。そんな手法で存在感を増すことで、寄付も集めようというわけだ。昨年はサンドラー夫妻の財団の資金以外に約100万ドル集め、ピュリツァー賞で信頼性を上げた今年は、同じく300万ドル以上を集める予定だ。今後はサイトで広告掲載も検討する。

 調査報道を広く盛り上げようと、手法やデータをサイトで公開もしている。09年7月、ロサンゼルス・タイムズの1面に「問題ある看護師をカリフォルニア州が放置」という記事を書いた後、同様に各地で調べる場合の方法や連絡先をサイトに掲載。政府の景気刺激策を検証する一環で、各地の失業率など経済指標も載せる。サイトの閲覧者数は、この半年で5割増えた。

 最近は英国の新聞と組んだ。いずれは日本の新聞と提携も、と思い描く。「ロッキード事件のような日米をまたぐ問題があった場合、日本の新聞と取材できればすごい連携になる」。調査報道を見つめるスタイガーさんの目は、世界のメディアにも注がれている。(藤えりか)

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