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〈メディア激変149〉米メディアの模索―9 担い手、ネットワークづくりへ

2010年11月12日17時38分

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写真アメリカン大のルイスさん。壁にウォーターゲート事件が題材の映画「大統領の陰謀」のポスターがあった=ワシントン、藤写す

 「ファット・キャット・ホテル(有力者や金持ちのホテル)」

 チャールズ・ルイスさん(57)が始めた調査報道NPO、センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)が1996年に出した記事は、各界を慌てさせた。民主党の高額寄付者が特権的にホワイトハウスに泊まっていることを、宿泊者75人の実名や経緯とともに暴露したのだ。職業ジャーナリスト協会から表彰された。89年の設立以来初めて受けた賞だった。

 エネルギー大手エンロンと当時のブッシュ大統領の関係、イラクとアフガニスタンで「棚ぼたの大金」を手にした米軍請負業者……。数々の特ダネで評価を高めたCPIを、ルイスさんは2004年末に去った。「創業者は潮時を考えなければ」と考えたからだ。

 ルイスさんが目を向けたのが、次世代の育成だ。アメリカン大を拠点に08年、NPOの「調査報道ワークショップ」を立ち上げた。

 スタッフは修士号とりたての若手から、経験ある記者まで十数人。ルイスさんは編集主幹だ。財団から資金を集め、年間予算は当初の40万ドル(約3200万円)が、今年は200万ドル以上になる見込み。既に全米4位の規模だ。

 ワークショップは、提携する米公共放送PBSのほか、ワシントン・ポスト紙や英フィナンシャル・タイムズ紙などと組んで記事を出す。

 そうしたNPOと既存メディアの連携は増える一方だ。AP通信は09年6月、調査報道NPOから記事配信を受けると発表した。ワークショップのほか、プロパブリカとCPI、カリフォルニアの調査報道センターだ。背景には取材費を削りたい既存メディアと、多くの人に記事を見てもらいたいNPOの利害の一致がある。

 双方向ジャーナリズム研究所(ワシントン)の09年の報告書によると、05年以降、米国で少なくとも180の財団が、計1億2800万ドルを報道などのプロジェクトに注いだ。今の報道への危機感と、寄付への優遇税制が後押しし、NPOの報道機関が各地で生まれた。調査報道NPOだけで現在約60あり、増え続けている。

 ルイスさんの呼びかけで09年夏、ニューヨーク州郊外の会議場に、米国の調査報道NPOの代表者ら数十人が集まった。初の業界団体「調査報道ネットワーク」をつくるためだ。増えるNPO同士が、雇用や資金集めなどの情報を共有し、報道面の連携も考える。「新しい、小さなNPOには、助けになる」とルイスさん。

 調査報道NPOはロンドンなどでも生まれている。米国の例を学ぼうと、欧州の記者らがルイスさんに助言を仰いでいる。(藤えりか)

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