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〈メディア激変151〉米メディアの模索―11 廃刊の教訓携えホノルルへ

2010年11月12日17時45分

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写真ホノルルのシビル・ビート編集局で働くジョン・テンプルさん(左)=ランディ・チンさん撮影

 米名門地方紙ロッキーマウンテン・ニューズの最後の発行人兼編集長となったジョン・テンプルさん(57)。「メディアは読者をもっと理解すべきだ」と廃刊の教訓を講演やブログで広める傍ら、昨秋、ラスベガスに移り、地方紙などを運営するメディア企業の顧問をしていた。

 その社主から昨年11月、「友人がこんなブログを書いた」とメールが届いた。友人とは、ネット競売大手イーベイを創業したハワイ在住のピエール・オミディアさん。ブログには「市民を巻き込みながら、地域の問題を掘り下げ、分析するニュースサービスをホノルルで立ち上げる。採算がとれ、持続可能な形で」とあった。

 「自分が得た教訓と同じ考えに立っている。何か助けになるかもしれない」。テンプルさんはオミディアさんと連絡をとった。意気投合し、計画に加わることに。テンプルさんは今年1月、ホノルルに移った。

 オミディアさんは08年から、イーベイ元幹部のランディ・チンさんとツイッターを使ったニュース事業を始めていた。それを発展させて今年5月、テンプルさんをエディターに、ネットメディア「シビル・ビート」を発足させた。

 シビル・ビートはここ数年増えているNPOではなく、商業メディアだ。主な収入源は会員からの1カ月19.99ドル(約1600円)の購読料。無料記事もあるが、基本は有料だ。景気に左右される広告は載せない。「記事への課金がジャーナリズムを支える最良の方法だ」と言うテンプルさんの言葉には、広告収入激減でロッキーが廃刊に追い込まれた苦い歴史がにじむ。発足から半年。採算などの評価はこれからだが、「ホノルルでの存在感を感じる」という。

 特徴は、会員と記者との議論だ。会員は記者に取材してほしいことをサイトに書き込み、記者とネット上で意見を戦わせる。取材の前に、会員らとのやり取りから始める場合もある。議論だけなら、30日間99セントで参加できる。

 記者は数人。リポーター・ホストと呼ばれ、議論を促す役を担う。取材の過程をブログやツイッターで披露もする。2日の中間選挙の際は記事を無料で掲載。街の様子を動画や写真つきで発信し、多くの人が意見を書き込んだ。

 「単に出来事を報じるのでなく、地域に焦点を当てた調査報道を提供する。人々が地域の問題を理解する手助けをするのが我々の目標」。そう言うテンプルさんは今、ジャーナリズムの将来には楽観的だ。「今日使えるツールは素晴らしいし、事実に基づく報道に対する社会の需要は、恐らく今までないほど強い」と、読者との議論を通して実感している。(藤えりか)

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