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〈メディア激変152〉米メディアの模索―12 進む「リスクの外注」

2010年11月19日17時36分

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写真「現地の記者が拉致されても大きく報道されない」とジャーナリスト保護委員会のディーツさん=ニューヨーク、藤写す

 2008年9月初め、多国籍軍の駐留が続くイラク首都バグダッドの南部。イラク人のイブラヒム・ジャサムさんの自宅に米軍とイラク軍の兵士らが現れた。家宅捜索後、ジャサムさんを拘束。「反体制派と通じ、治安を脅かしている」というのが理由だ。カメラは没収された。

 ジャサムさんはフリーの写真記者。当時、ロイター通信向けなどに現地で取材していた。ロイターによると、イラクの中央刑事裁判所は11月、拘束に足る証拠はないとして解放を命じたが、米軍は応じなかった。今年2月、罪状なしで解放されたが、拘束は1年5カ月に上った。

 ジャーナリスト保護委員会(CPJ、ニューヨーク)によると、ここ数年、紛争地などでフリーや現地の記者が拘束または殺害される例が増えている。09年12月時点で世界で136人の記者が拘束されていたが、うちフリーは44%の60人。3年前のほぼ2倍という。殺された記者は09年、世界で過去最多の72人。うちフィリピンやソマリアを中心に、現地の記者が69人と大半を占める。その割合もここ数年増えている。

 「メディアが海外の支局と人員を減らすにつれ、フリーの記者が世界の報道の前線に立っている」。CPJのジョエル・サイモン事務局長(46)はそう指摘する。

 費用のかかる国際報道は、経営が悪化すれば削減の対象だ。ボストン・グローブ紙は海外支局をすべて閉め、他の米メディアも海外特派員を引き揚げている。代わる主な担い手が、フリーや現地の記者だ。「『リスクの外注』と言われている。費用も安くあがる」と、CPJのアジア担当プログラム・コーディネーター、ボブ・ディーツさん(65)は言う。

 パキスタンの部族地域で06年6月、拉致されていたパキスタン人のフリー記者、ハヤトゥラ・カーンさんが遺体で見つかった。カーンさんは拉致の直前、米軍のアルカイダ幹部殺害を示す写真を撮って記事を書き、欧州の写真通信社や英字紙などに出していた。ディーツさんによると、記事の代金は250ドル(約2万円)くらい。「米国人なら、もっと高かっただろう」

 アフガニスタンでタリバーンに拉致されたニューヨーク・タイムズ紙のデビッド・ロード記者とアフガン人記者のタヒル・ルディンさんが09年6月、ともに自力で脱出した例もある。「でもたいていは、米メディアの記者は保険会社が交渉して助かり、現地の記者は殺される」。ディーツさんは声を落とした。(藤えりか)

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