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〈メディア激変181〉ネットとジャーナリズム―9 いかに育てるか

2010年12月31日17時7分

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写真Jスクールは実践的な授業が多い。「ツイッターとメディアリテラシー」について語る非常勤講師の津田大介さん(奥)。右端は大学院生の丸山紀一朗さん=東京都新宿区の早稲田大

 気軽な発言、思わぬ反発――ネットの怖さを身をもって学んだ大学院生たちがいる。

 「ジャーナリズムの修士を授与する日本初の大学院」。そんなうたい文句で早稲田大にできて3年目のジャーナリズムコース(Jスクール)1年、村井七緒子さん(24)らだ。

 「事件」が起きたのは5月末。実習で「ネット選挙解禁」をテーマにネット配信番組を作ろうと考え、解禁派の生中継を見学に行った。「前座で出てよ」と誘われ、3人が出演した。

 「選挙行きますか?」「私は行きます」「僕は行ったことがありません」「僕も行かない」

 これがほかの出演者の怒りを買った。「とんでもないやつだよね」「選挙に行かないとマイクを持って言うやつは日本にいるな、と言いたい」。さらに掲示板「2ちゃんねる」で集中砲火を浴び、産経新聞にも批判された。

 「20代の国政選挙投票率は50%以下なのに、行かないと言っただけで批判される。違和感を覚えました」と村井さん。では、選挙に行く意味は何か。作るべき番組の目標が定まった。

 こうして7月末にユーストリームで配信された番組が「選挙バージン〜政治漬けの日々〜」だ。街頭インタビューや議論を重ね、選挙に出馬したことのあるゲストらと討論した。

 Jスクール代表として出演したのは、1年の丸山紀一朗さん(23)。「番組は全体に硬かった。本番前は笑いながら本質的な議論をしたのに、炎上を気にしすぎたかも」と振り返る。

 丸山さんはその後、別の番組を作った。「閉ざされた死刑―法務省と情報公開―」。法務省が刑場を公開したが、参加を求めた丸山さんたちに連絡が来たのは公開後だった。その経緯や元刑務官らへのインタビューを盛り込んだ。

 「たった2人でビデオカメラを持って取材に行けば番組ができ、見てもらえる。ネットがなければできない体験でした」と言う。

 だが、数時間の素材を12分にまとめる編集には苦労した。Jスクール非常勤講師で、非営利のネット放送局「OurPlanet−TV」代表の白石草さん(41)に助けてもらった。

 一般人を対象にした「映像制作ワークショップ」も開く白石さんは語る。

 「日々のできごとを記録するのがジャーナリズムの原点。『アンネの日記』の時代と違い、ケータイ動画のような世界が広がる時代に、身近な道具で発信する人が増えれば新たなジャーナリズムも生まれる。そう期待しています」

 ネット時代のジャーナリズム、ジャーナリストをいかに育てていくか。模索は始まったばかりだ。(編集委員・隈元信一)

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