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〈メディア激変185〉電子書籍元年、その後―4 人気作家が制作会社

2011年1月7日17時53分

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写真G2010を設立した村上龍さん(中央)と同社の船山浩平社長。右端はよしもとばななさん=昨年11月、東京都新宿区、坂田写す

 作家の村上龍さん(58)が昨年11月、電子書籍の制作・販売会社「G2010」を設立し、取締役に就いた。「なぜ、作家が出版社と組まずに電子書籍を販売するのか」。設立の記者会見で自らそう問いかけ、理由を語った。

 その4カ月前の夏、村上さんは講談社の雑誌で連載してきた長編小説「歌うクジラ」の電子版を、紙の本に先行して出した。制作したのは、講談社ではなく、音楽やデジタルコンテンツの制作会社「グリオ」だった。

 「出版社は紙の本を作るプロであって、電子書籍を作るプロは非常に少ない。グリオのようなITベンチャーと組む方が効率的」。村上さんは理由の一つを説明した。電子版は、この小説のために音楽家の坂本龍一さん(58)が作った音楽や映像がついた「リッチコンテンツ」で、グリオがパートナーとしてふさわしいと考えたという。

 電子書籍の制作で特定の出版社と組めば、他の出版社の本を電子化する際に摩擦が起き、機動力のあるコンテンツ制作ができない――そんな理由もあげた。

 電子書籍の制作費や売り上げの配分を、できる限り公開する考えも明らかにした。

 「歌うクジラ」の電子版はアイパッド向けに1500円(税込み)で発売。昨秋、講談社から出版された紙の本の半額以下だ。売り上げの30%はアップル社の手数料。残りを村上さん、グリオ、坂本さんで配分する。制作実費150万円を回収する前は、3者の割合はそれぞれ20%、40%、10%。回収後は同40%、20%、10%と著者に手厚くしたという。ダウンロード数は昨年末で約1万5千に達している。

 G2010は村上さんとグリオが共同出資。業務はグリオが請け負う形になる。両社の船山浩平社長(39)は、制作費などを公開する理由を「作品を書いた人にお金が回らないと目指す人がいなくなる。不透明な部分をできる限りなくし、気持ちよくやりたかった」と話す。

 設立後1年間に電子書籍20点をリリースし、1億円の売り上げを目指すという。瀬戸内寂聴さん(88)の小説、よしもとばななさん(46)のエッセーも音楽やアニメなどを採り入れた電子書籍として刊行した。

 作品の特徴に合わせて、リッチコンテンツにするかどうかや、著者との配分などはその都度決定する。G2010から刊行する作品の公募も検討している。船山社長は「電子書籍の取り組みは、今は種をまき、育てていく時期。まだまだ、予想もつかないような動きが生まれてくる」。(坂田達郎)

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