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〈メディア激変191〉電子書籍元年、その後―10 独自の表現生まれるか

2011年1月21日17時52分

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写真東京電機大出版局長の植村八潮さん=東京都千代田区、坂田写す

 「2010年の電子書籍ブームは、紙の本はどうなるのか、という危機感から生まれた。ワクワク感がなく、楽しくなかった」

 「電子出版の構図―実体のない書物の行方」などの著書があり、電子書籍に詳しい東京電機大学出版局長の植村八潮(やしお)さん(54)は話す。総務、文部科学、経済産業の3省懇談会にも参加してきた。

 危機感のきっかけは、図書館の蔵書を対象に世界中の本をデジタル化するグーグルの方針だったとみる。各国で反発が起き、米裁判所で和解協議。09年、日本の著作物は対象から外れたが、電子書籍端末の広がりも予想され、「黒船」という言葉とともに出版界を揺さぶる。

 マルチデバイス対応、ワンソースマルチユース――電子出版をめぐり、コンテンツを様々な端末に配信するという戦略がよく語られる。

 「本来、コンテンツは、表現するメディアによって変える必要がある。日本には一つの成功例がある」

 植村さんが挙げるのはケータイ小説だ。携帯電話の小さい画面に合った、簡単で、会話の多い文体が生まれた。女子中高生を中心にブームとなり、ベストセラーが映画になった。

 表現が乏しい、決まり文句が多い、と批判もあった。「長編小説を携帯電話で読めば嫌になる。独自の文体は当然」。新聞にも当てはまるという。「紙面の制約があり、重要なことから書く。ネットでは、今の書き方では次のページを読まなくても済む。『この先は有料』とする際も、先に疑問を投げかける必要がある」

 電子書籍をめぐる議論で、中小の書店が枠の外に置かれていることを危惧する。

 「国内には1万4千〜1万5千の書店がある。面積が25倍のアメリカは約9千。日本は駅の帰りに立ち寄れる文化。絵本に触り、立ち読みできるから子どもは本が好き」

 出版文化の基盤を支えた書店は減り続けている。書店が安心して電子ビジネスに取り組める方法はないか。国とも話し合っている。

 ケータイコミックや電子辞書は、すでに一つの市場を形成している。文字中心の文芸は、出版物の中で最もデジタルに向かない分野だという。「コンテンツが紙の書籍の置き換えで、アウトプットとしての電子書籍だったら市場は広がらない」と指摘する。

 「今はトライ・アンド・エラーで、いろいろ試すしかない。間違いなく言えることは、新しいメディアは、古いメディアを模倣する段階から、古いメディアとは全く違うメディアになったときに初めて成功する」(坂田達郎)

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