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〈メディア激変193〉法と安全―2 遊ぶための約束

2011年1月21日17時53分

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写真「クリエーティブな人材育成で日本が後れを取ってしまうのでは」と野口祐子さん

 「作品がケーキだと想像してみて……あなたのケーキをレシピと共に公開すること。あなたに影響を与えた人を評価すること」

 「遊ぶための約束」と題した文章を掲げているのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの教育用プログラミング環境「スクラッチ」のサイトだ。ブロックを扱うようにプログラムを組み合わせ、子どもが簡単にアニメやゲーム、音楽などを創作、公開、共有できる。他の子の作品を基に、新しい作品をつくることも推奨。「遊ぶための約束」は、その際の著作権に関する約束事「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」の内容を説明している。

 「日本の学校の著作権教育は『しちゃいけないこと』から始まっていて、子どもたちの自由なやる気もそいでしまう。MITの取り組みは対照的。他の子の作品を写したり、まねしたり、の中から創造性を育むアプローチです」。「デジタル時代の著作権」の著書もある弁護士の野口祐子さん(38)は、そう話す。

 クリエイティブ・コモンズは、ネット時代にあったデジタル著作権のルール普及を目指す国際的プロジェクト。作者が「公開条件の継承」「原作者表示」などの条件を選んで、作品の自由な利用許可を表明する仕組みだ。02年にローレンス・レッシグ・ハーバード大学教授の提唱で始まり、今では73の国・地域に拡大。世界知的所有権機関(WIPO)からも注目され、ホワイトハウスの公式サイトなど公的機関も採用している。世界で4億、日本でも500万を超す作品が、同ライセンスで公開されている。野口さんは日本のNPO法人の常務理事として、その運営に携わる。

 「小学生でも携帯ゲーム機でアニメ作品、つまり著作物をつくり、ネットに投稿できる時代。著作権法も特定の業界法からお茶の間の法律へと位置づけが大きく変わりました。でも、今の法律は小学生どころか専門家にもわかりにくい」と野口さんは言う。

 わかりにくい条文。爆発的に増えるデジタル著作物。それを超える勢いで激増する著作権の権利処理作業。作品の自由な流通のハードルを下げる手立てとして、米国著作権制度の「フェアユース(公正利用)」を参考にした著作権法改正の議論も行われてきたが、内容は限定的だ。

 「政府は知的財産戦略として『国民総クリエーター』時代の人材育成を掲げる。だが著作権の現実はとてもそうではない。MITのような積極的な取り組みを怠っていると、長期的に見て人材育成で後れを取ってしまうのでは」と野口さんは危惧する。(編集委員・平 和博)

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