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〈メディア激変194〉法と安全―3 情報セキュリティーの行方

2011年1月21日17時53分

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写真「情報管理も、処罰を覚悟の上での不正行為には弱い」と語る岡村久道さん=東京都中央区

 「従来も情報漏洩(ろうえい)はあったが、今起きていることのインパクトは全然違う」。情報セキュリティーに詳しい弁護士の岡村久道さん(53)は、相次ぐネットへの情報流出をそう捉える。

 告発サイト「ウィキリークス」は昨年4月にはイラクで米軍ヘリコプターが民間人を銃撃した内部映像、7月にはアフガニスタン戦争に関する約9万2千件、10月にはイラク戦争に関する約39万件の米機密文書、そして11月末からは約25万件の米外交公電の公表を始めた。映像などの流出で米軍上等兵が逮捕・起訴されている。

 国内でも10月末、個人情報を含む警視庁公安部の国際テロ関連文書114点がファイル交換システム「ウィニー」を通じてネット上に流出。また11月初めには、尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる海上保安庁撮影の映像が、海上保安官の手でビデオ共有サイト「ユーチューブ」に投稿された。

 何十万という文書をこっそり「紙」で持ち出したり、大量配布をしたりすることは極めて困難だ。さらにビデオテープはダビングで画質も劣化する。「だがデジタルはコピーも一瞬。パソコンははたから何をしているかわからず、USBなら持ち出しにも気付かれない。漏洩のスピードとともに、その敷居が極めて低くなった」と岡村さんは言う。

 ネットが社会基盤化し、組織内の情報管理のあり方は大きく変わった。その中で、漏洩や改竄(かいざん)、システム障害による利用不能などの危険を防止する取り組みが情報セキュリティーだ。

 経済協力開発機構(OECD)のガイドラインを始め、国際標準化機構/国際電気標準会議(ISO/IEC)や日本工業規格(JIS)でも規格化。政府も「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」で、対策の導入、運用、評価などを具体的に定めている。

 情報の内部統制では、「統制環境」と呼ばれる倫理観を含めた組織風土が重要になる。管理の仕組みをいくら徹底させたとしても、「処罰を覚悟の上での不正行為には弱い」と岡村さん。ウィキリークス、尖閣ビデオはそのことを証明した。「そこで、教育の徹底とか監視カメラの導入など、合わせ技で対応していくしかない」

 一方、大量の情報の公表・閲覧が、ネットを通じて直接できるようになったことで、既存メディアのあり方も問われた。岡村さんは「国民の『知る権利』に奉仕するのがメディアの使命のはず。情報の流出問題以前に、まずメディアがその使命を十分果たし、政府などが持つ情報の透明性を確保していくことが大切なのではないか」と指摘している。(編集委員・平 和博)

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