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〈メディア激変196〉法と安全―5 全通信を監視する

2011年1月28日17時28分

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写真「ブロッキングは、中国やイランの通信監視と外形的には同じこと」と話す森亮二さん=東京都港区

 「つまり、言論が規制されている中国やイランの通信監視と、外形的には同じことが行われるんです」と弁護士の森亮二さん(45)は言う。

 ネット上の児童ポルノ対策として導入される「ブロッキング」という手法のことだ。政府の犯罪対策閣僚会議が昨年7月、「児童ポルノ排除総合対策」で流通・閲覧防止対策の一つとして、プロバイダー(接続事業者)による「自主的導入の促進」を打ち出した。

 ブロッキングとは、利用者の全サイト閲覧先を常時監視し、児童ポルノ掲載サイトのアドレスをまとめたリストと照合、該当すれば即座に通信を遮断するというものだ。

 リストによる違法・有害情報の制限手段として、利用者の同意を得る「フィルタリング」という方法もある。だがブロッキングは、利用者の意思とは関係なく強制的に実施される。政府が主導すれば憲法が禁止する「検閲」に当たる可能性もあり、民間の自主的導入としている。

 憲法が保障する「通信の秘密」は、通信内容だけではなく通信先の情報にも及び、ブロッキングはこれを形式的に侵害する。

 このため総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」は昨年5月、▽児童ポルノ削除や検挙など他の方法では児童の権利を十分に保護できない▽正当な表現行為を不当に侵害しない▽児童への権利侵害が著しい、などブロッキングが可能となる条件を示し、乱用の歯止めとした。

 教育関係者や事業者でつくる「安心ネットづくり促進協議会」も森さんが主査を務める作業部会で法的問題を検討、6月に報告書を公表した。ここでも、削除要請では効果がなく、被害が著しい、などの要件を挙げた。

 問題も残る。ブロッキングは「カーテンを閉めて見えないようにする」手立て。児童ポルノ流通にも利用されるピア・ツー・ピアのファイル共有システムには通用しない。

 リストの作り方によっては関係ないサイトまで遮断し、表現の自由を侵す可能性もある。また、ネットの経路を操作するため、通信障害を引き起こすこともある。08年2月には、パキスタンの通信会社がユーチューブを遮断しようと操作を誤り、世界規模で接続できなくなった。

 今後、民間団体が作成するリストを基に、プロバイダーがブロッキングの実施を判断し、スタートする見込みだ。

 ブロッキングは、リストの追加でいくらでも範囲を拡大できる。「その危険を十分認識しておく必要がある」と森さんは指摘する。(編集委員・平 和博)

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