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〈メディア激変197〉法と安全―6 今そこにある“国民背番号”

2011年1月28日17時32分

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写真高木浩光さんは「技術とプライバシー保護のバランスを真剣に考えるべきだ」と訴える=東京都千代田区

 アップルのアイフォーンやグーグルのアンドロイド携帯用の主なソフト(アプリ)101個を調べたところ、その半数近くで端末の識別番号や位置情報、そして中には年齢、性別などの個人情報を外部の広告会社などに無断で送信していた――米ウォールストリート・ジャーナル紙が先月、そんな検証内容を報道した。これに対して利用者が、アプリの情報送信が著しかったアップルを提訴する事態になった。

 「だが日本ではすでに、あらゆる携帯電話で『不変のID』が送信されている」と産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センターの高木浩光主任研究員(43)。「政府が検討する共通番号制度ができる前に、幅広く使われる事実上の“国民背番号”は現にあるんです」

 高木さんが指摘するのは携帯電話各社が契約者ごとに、電話番号とは別に振る固有の識別番号のことで、「ケータイID」とも呼ばれる。携帯サイトに送信され、アクセス状況の管理などに使われる。また、ワンクリックで本人認証ができる「かんたんログイン」でも使われている。このIDは、解約などを除き、基本的に機種変更や利用者からの申し出では変わらない。

 IDは英数字の組み合わせ。携帯サイトはそれだけでは個人を特定できない。ただ、このIDを基に、利用者の閲覧・購買履歴を匿名の状態で集め、蓄積・解析できる。「それは個人情報保護法に該当しないとされ、履歴の売買すら可能な状態」と高木さん。だが、こうして蓄積された膨大な情報が、いったん氏名や住所と結びつけば、「途端に実名のプライバシー情報になる。そのリスクはどんどん高まっている」。

 ケータイIDは、国内で独自進化を遂げた“ガラパゴス”とも言われる携帯電話向けサイトで使われる。一方、パソコン、スマートフォン向けのネットでは「クッキー」という簡易認証技術がある。これについても、利用者の閲覧履歴などを無断で収集するとしてプライバシー問題が指摘されてきたが、多くは利用者の判断で削除や拒否することも可能だ。「クッキーと比べても、各サイトで共通に使われる不変のIDの危険性ははるかに高い」と高木さんは言う。

 変化の兆しもある。総務省は昨年6月、携帯電話を他社の通信回線で使えないよう制限している「SIMロック」の解除に関するガイドラインをまとめた。この中で、「ケータイID」による「名寄せ等プライバシー上のリスク」軽減のための措置を、携帯事業者に求めた。

 「技術とプライバシー保護のバランスを、社会として真剣に考えるべきだ」と高木さんは訴える。(編集委員・平 和博)

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