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〈メディア激変198〉法と安全―7 「リトルブラザー」の脅威

2011年1月28日17時35分

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写真「プライバシーへの脅威は意識しづらくなっている」と新保史生さんは言う=東京都千代田区

 「ビッグブラザーからリトルブラザーへ、プライバシー侵害の脅威はずっと意識しにくいものになっている」

 慶応大学准教授で、09年から経済協力開発機構(OECD)情報セキュリティー・プライバシー作業部会副議長も務める新保史生さん(40)は、メディア環境の変化をそう表現する。「そこには究極の監視社会の側面もあります」

 ビッグブラザーとは、ジョージ・オーウェルの反ユートピア小説「1984年」に登場する監視国家の独裁者。かつてのプライバシー脅威論は、政府が情報を集中管理することへの懸念だった。だが今は、民間も含めて様々なプライバシー関連情報が分散処理、共有され、政府を超える規模で蓄積されるようになった。そこにこれまで以上の脅威がある。

 例えば、利用者が5億人を超す交流サービス(SNS)フェイスブックは中国、インドに次ぐ“人口規模”で、実名によるプロフィル、人間関係、趣味嗜好(しこう)のデータベースを持つ。

 それらが「リトルブラザー」を形づくる。街角の様子を記録し続ける民間の防犯カメラは、今や珍しくもなくなった。「さらに、例えば携帯電話を監視ツールと意識して使っている人はあまりいないでしょう」と新保さん。

 携帯のカメラを他人に向ければ「監視カメラ」にもなる。一方で、肌身離さず持ち歩く携帯電話から蓄積しうる情報は、一日の生活の大部分をカバーする。全地球測位システム(GPS)による位置情報、ネットショッピング、メールやカレンダーから健康情報まで。

 「今そこにあるプライバシーの危機を意識せず、便利さからこの状況に慣れてしまっている」

 だが個人情報保護法は「特定の個人を識別できる」情報の取り扱いを定めるだけ。他人に知られたくない内容などを含むプライバシー情報が増大し続ける現実とのギャップが広がる。

 そしてクラウド・コンピューティングでデータは国境を越え、その所在すら判然としない。「今の世界的な潮流は、プライバシー・個人情報保護の国際的な越境協力。協力なくしてプライバシー保護なし、という状況がすでにやってきている」と新保さん。OECDでは越境協力に関する勧告が出され、アジア太平洋経済協力会議(APEC)では具体的取り組みも始まっている。「国際標準にのっとった保護体制が国内で整備されないと、それに対応できない」

 世界規模で広がるウェブサービス。情報流通に国境が無いクラウド。そして次々に登場する新技術。その中をプライバシーが漂流している。(編集委員・平 和博)

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