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〈メディア激変199〉法と安全―8 グーグルの「独占」に懸念

2011年1月28日17時38分

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写真「インターネットが広がり、知らぬ間に個人のデータが企業に蓄積されている」と話す玉井克哉・東大教授

 「このまま行けばグーグルに情報が集約され、情報に関するあらゆる産業が競争上不利になる」。知的財産の問題に詳しい玉井克哉・東大教授(49)は、ネット検索世界最大手の米グーグルと日本のヤフーとの提携に、いまだに懸念を抱く。

 昨夏発表された提携の内容は、主に二つ。グーグルが(1)検索サービスの土台となる技術「検索エンジン」と(2)検索連動型広告の配信システムをヤフーに提供する。公正取引委員会は事前の相談で、「独占禁止法上問題ない」と提携を容認。ヤフーの井上雅博社長(53)は「今後も(グーグルと)競争し続ける」と強調した。

 だが、発表後、提携を問題視する声がわき起こる。国内で両社の検索シェアが事実上9割を超え、「競争が阻害される」という批判だ。

 反対の急先鋒(きゅうせんぽう)が、自前の検索エンジン「ビング」の日本語版を開発したばかりの米マイクロソフト(MS)だった。MSは公取委に「提携は問題がある」として調査を求めた。ロビー活動も展開。10月には、ネット商店街大手の楽天も提携に反対を表明、公取委に調査を求めた。

 検索エンジンは、日本だけでも月約90億回使われる、ネットのインフラだ。何かを検索する際、多くの人は上位の結果から見る。検索エンジンが統合されれば、両社の検索結果も同じになり、グーグルが表示順位を恣意(しい)的に操作する可能性も高まる――。反対派はそう主張した。

 玉井教授は昨年11月、御厨(みくりや)貴・東大教授(59)らとともに、提携反対の立場でネットで署名活動を始めた。「グーグルが集める膨大なデータは、我々が何時に起きるか、どのくらいの量のビールを飲んでいるか、などの情報の把握すら可能にする」。国家より多くの情報を一企業が握ることに、乱用などの懸念が募る。

 公取委は12月、提携容認の判断を改めて下した。検索エンジンを統合しても、ヤフーが検索結果に独自の変更を加えるため、競争は続く、などの理由だった。ヤフーは昨年末、グーグルの検索エンジンへの移行を完了した。

 だが、検索エンジンは、検索回数が増えるほど精度が増し、優位性が強まる性質がある。玉井教授は「日本の公取委は将来、今まで例がなかった『個人データの独占』という状況に、対処しなければならなくなる」とみる。

 提携承認の数日前。欧州委員会は、グーグルが検索エンジンでの独占的地位を乱用し、欧州連合(EU)競争法に違反している疑いがあるとして、正式調査を始めると発表した。巨大ネット企業の影響力が強まる中、世界では「巨人」への監視が広がる。(五十嵐大介)

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