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〈メディア激変205〉模索する企業―4 アップルの秘密主義

2011年2月11日18時15分

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写真東京・銀座のアップルストアは、平日の日中でもにぎわっている

 「アップルをとても愛しており、できる限り早く戻りたい」。米アップル最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏(55)は1月17日、病気療養のため休職することを、従業員向けの電子メールで明らかにした。わずか7行の文章だった。

 時価総額25兆円の企業トップの病状を巡り、米国ではネットを中心に膨大な数の報道が飛び交った。「病状は悪いのか」「投資家に病状を開示すべきだ」。アップルは取材に対し「公表した以外のコメントはできない」としている。

 騒ぎの根底にある要素の一つは、アップルの「秘密主義」だ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「ジョブズ氏にどこまでプライバシーは許されるのか」という17日付の記事で「アップルは情報開示をめぐり、過去にも批判を受けてきた」と指摘する。

 その徹底ぶりは筋金入りだ。昨春、米国の有名ブログが、アップルの従業員が新作の多機能携帯端末「iPhone(アイフォーン)」の試作機を飲食店で落としたとして、発売前にその詳細を報じた。報道によると、同社が警察に「盗みがあった」と報告したため、警察が記事の筆者の自宅に捜索に入る事態にまで発展。アップル広報は今でも「端末が弊社のものだったかはコメントしない」としている。

 アップルが秘密主義を貫くのは「お客様が箱を開けた時に『ワォ』と喜んでもらうため」(関係者)。その「驚き」を体現するのがジョブズ氏だ。新製品の発表会は自ら壇上に立ち、世界中にネットで中継する。メディアが新商品に関する臆測記事を発売前に書き、機運を盛り上げる――。同社の「必勝パターン」だ。

 だが、時として混乱を招くこともある。昨年5月、日本で新型情報端末「iPad(アイパッド)」が発売される前、アップルや家電量販店が予約の受け付けを始めた。しかし、「品薄」を理由に2日後に中止。同社から店側に詳しい状況は伝わっておらず、困惑する客の姿もあった。

 ITジャーナリストの西田宗千佳氏(39)は「ブランド価値を高める方向に情報を誘導するアップルの手法は、ファッションブランドに近い。仮にジョブズ氏が辞めた場合、価値を維持するには、IT業界の流れの先を行く相当思い切った戦略が必要だ」と話す。アップルの「強気路線」の行方は、カリスマ経営者の去就に大きく左右される。(五十嵐大介)

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