現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. メディア激変
  5. 記事

〈メディア激変208〉模索する企業―7 消えた機械記者クラブ

2011年2月11日18時16分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真かつて「機械クラブ」が入っていた旧経団連会館の跡地。後ろに新しい本部ビルが見える=東京・大手町

 東京・大手町に一昨年まであった旧日本経団連会館。以前、このビルの中に自動車や電機業界を取材する記者が所属する記者クラブ「機械クラブ」があった。1階北側の部屋に、テレビ局や新聞社の記者が詰めていた。

 当時を知る関係者らによると、1999年、経団連側がスペース上の理由で立ち退きを要請。クラブ側が閉鎖を決めた。自動車は業界団体がクラブを移設したが、電機業界の記者クラブはなくなった。

 機械クラブには「発表の48時間前までに、幹事社に発表の概要を伝える」という紳士協定があった。通告後は、企業が一部の記者に詳細を漏らしたり、加盟社が発表前に報道したりすることはできない。ルールを破れば、企業側にも記者にも「出入り禁止」などの処分があった。それでも、NECで20年以上広報を担当する荒井俊則さん(56)は「大手メディアの記者が集まっており、行けば話ができた。便利で効率的な場所だった」と振り返る。

 そんなメディアと企業の関係は大きく変わった。特にパソコンや携帯電話などのIT製品については、ネットで情報を得る消費者も多く、ネットで発信する記者も増えた。ソニーの広報は「スペースに制限がないネットメディアでは写真をたくさん載せてもらえるケースも多く、重要性は増している。接触は急激に増えた」。NECでは、発表文の配信先に占めるネット系メディアの記者の割合が10年前には1、2割程度だったが、今では4割ほどになった。

 ただ、企業もメディアも「距離感」をはかりかねている。昨年11月、富士通の役員が記者に囲まれて話す様子が、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿された。会見後、取材対象者を囲んで話を聞く「囲み」と呼ばれる取材の様子だ。フリー記者が撮影した映像だった。

 これを機に富士通は1月以降、「会見終了後の役員への個別取材について、当社に無断で動画サイトへ映像の配信を行うことを禁止します」という通知を出している。記者会見と違って、非公式の場と位置づけているためだ。報道側から通知に対する苦情は出ていないという。

 20年以上、パソコンや携帯電話などの記事を書いてきた男性フリーライターは「以前より取材の敷居は低くなった」と感じる。だが、ITバブル後、報道というより、製品情報を発信する「情報産業」という色合いが特にネットメディアで強まっている気がするという。「取材はしやすくなったが、企業に厳しい突っ込みを入れる報道機関の存在感が薄まることは、むしろ懸念している」と話す。(五十嵐大介)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介