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〈メディア激変209〉模索する企業―8 ウェブの充実、両刃の剣

2011年2月18日17時30分

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写真記者に取り囲まれる新日鉄の宗岡正二社長(中央左)と住友金属工業の友野宏社長(同右)=3日午後、東京都内のホテル

 新日本製鉄と住友金属工業の2人の社長を、30人を超える記者が、少しでも具体的な事実を引き出そうと取り囲んでいた。3日午後5時半に「合併検討」の記者会見は終わったが、その後もぶら下がり取材は続いた。

 合併検討を知らせるニュースリリースは午後4時半の会見開始と同時に、両社と東京証券取引所のホームページにアップロードされた。会見場にいなくても、基本的な発表内容はどこにいても見られる。だが、両社長の話しぶり、様子といった肌感覚の情報は現場でしか取れない。現場の情報がニュースの付加価値を増す。

 「当事者に会って話を聞く」。そんな取材の基本が企業広報のウェブ活用で揺らぐ恐れがある。経済広報センターによると、日本経団連に加盟する企業の94.9%(2008年)がウェブサイトを持ち、決算資料やニュースリリース、会社の概要、商品説明などを掲載。また、8.7%がマスコミ向けのウェブサイトを一般向けとは別に開設、報道目的を前提に全役員の略歴や顔写真を提供する会社もある。

 かつては、トップ人事などの取材で次期社長の顔写真の入手が難しいこともあった。今ではウェブサイトから手に入れることもできる。会社の業績は過去も含めていつでも細かに知ることができる。記者が取材先に電話をしたり、出向いたりして、データを手に入れる手間は格段に少なくなった。ウェブサイトの情報だけで記事を書こうと思えば書けないことはない。

 企業取材が多い日本経済新聞社では4年ほど前から編集局の部長以上が集まる会議で「ウェブ情報だけで記事を書くな。電話をしろ、直接取材をしろ」と何度も注意喚起しているという。包国信彦・編集局総務(53)は「便利な環境になって大きなわなに陥る可能性がある。それを防ぐために基本を徹底したい」と言う。

 朝日新聞の山川一基・ニューヨーク特派員(39)は昨年8月12日(現地時間)のゼネラル・モーターズの最高経営責任者の交代会見に戸惑った。電話会見で流れてくるのは音声のみ。新経営者の顔色など様子はうかがい知れない。「日本の大企業の社長交代でこんなことはないのに」。国土が広い米国ではネットを使った会見や電話会見は広く使われ、取材での問い合わせも「メールで」と注文がつくことも多い。

 日本企業のウェブ利用の広がりは今後さらに進むだろう。記者が基本動作を忘れないことが一層大切になる。(編集委員・安井孝之)

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