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〈メディア激変233〉この先へ―2 聞かれていなかった「声」

2011年3月18日18時10分

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写真拡大「インターネットという共通基盤の上では、メディアの垣根はない」と村井純さんは言う=東京都港区

 「日本や米国では多分できない」

 慶応大学の村井純教授(55)は、「インターネットの遮断」についてそう話す。1月末から2月にかけてエジプトで現実に起きた事態だ。2月から3月にかけ、混乱が続くリビアでも断続的に遮断が起きた。

 村井さんは、世界のインターネット運用担当者グループの一人として、「遮断」についての問い合わせを受けた経験がある。01年9月11日、米同時多発テロ直後、全米の空港を閉鎖したのと同じように、インターネットも止められないか、という米政府筋からの連絡だった。

 エジプトで遮断できたのは、主なインターネット接続事業者(ISP)が五つだけで、このISPに対して政府が強権を発動できる体制だったからだ。米国は、事業者も無数にあり、そのような強権発動の仕組みもない。

 「もしそれをやったら米国が破綻(はたん)する、とその時は説明しました。インターネットを止めると、経済など社会の動きが止まってしまう」

 米国だけではない。あらゆる国が、発展をするに従って、インターネットを介してグローバルなつながりが深まり、「ますます遮断はできなくなる」(村井さん)。今、インターネットは社会にそれだけ深く根を下ろしている。

 そしてメディアも変化した。例えば東京と大阪の民放局が昨年から始めたラジオ番組のインターネット配信「ラジコ」。「これまでのメディアの歴史は、受信機の開発と普及の歴史だった。ラジコはそれがいらない点で画期的」。ラジオだけではない。インターネットという共通基盤の上には、新聞も、完全デジタル化のテレビも乗る。そこにはメディアの垣根はない。

 インターネットを通して、記事の読まれ方、番組の見られ方についての情報量は、はるかにきめ細かくなる。その時、読者・視聴者の個人の「声」を、メディアがどう聞くのか。「それが問われる時代になる。そして読者・視聴者に協力してもらうこともできる時代です」

 村井さん自身も90年代半ばから、ツイッターの原型のようなシステムで、授業中の学生の「声」を聞くことを続けてきた。今、授業で使うのはツイッター。「教室に学生のツイッターを表示していると、『わかんない』と誰かが書くと『それは……』と教える学生が出てくる」

 一人ひとりの声が誰かの役に立つ。これまで聞かれていなかった声をすくい、その経験を積み重ねることで、情報の質、信頼性が高まるという循環が生まれる。「教育に限らず、新しいメディアは、そんな風に有効に使っていけると思っています」(編集委員・平 和博)

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