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〈メディア激変238〉この先へ―7 メディア化する八〇後

2011年4月1日17時42分

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写真拡大「読者を巻き込みメディア化するモデルは、AKB48にも通じる」と話す福嶋亮大さん=京都市中京区

 「インターネットを舞台に、自分自身もメディア化し、読者もメディア化している」

 京都大学非常勤講師で批評家の福嶋亮大さん(30)は、中国の80年代生まれの世代「八〇後(バーリンホウ)」の作家たちについて、そう話す。

 昨年出版した著書「神話が考える ネットワーク社会の文化論」では、ネット時代に情報を形づくる仕組みとしての「神話」という考え方を提示。これをキーワードに、情報工学などの概念を使いながら、ニコニコ動画から機動戦士ガンダムシリーズ、レイモンド・チャンドラー、村上春樹さん、ルイス・キャロルまでを読み解き、話題を呼んだ。

 専門は中国近代文学。同書でも取り上げたのが、八〇後の代表的な人気作家、郭敬明(グオ・ジンミン)さん(27)だ。小説を書くだけではなく、雑誌も発行し、デザインにもこだわり、ハリウッド映画のようなプロモーションビデオを作ったりもする。さらに読者による人気投票で、新人作家をデビューさせるなど、様々な方法で読者のコミュニティーを作り上げ、巻き込んでいく。

 「小説は一つのツールにすぎない。インターネットは文字でも動画でも何でも乗るマルチチャンネル。作家自身がそれをフル活用している“メディア企業体”なんです」

 背景には、中国の急速な大衆化と情報化がある。05年には1億人だったネット人口も、今は4億人超。米国を抜き世界最大だ。利用者の中心は若い世代。この環境変化に見合った情報発信モデルがまだない。「様々なメディアの要素を組み合わせ、実験をすることで、率先して新しい発信モデルをつくろうとしているんです」

 読者を巻き込み、メディア化して共鳴を増幅させるモデルは、「視聴者参加型のテレビ番組や、日本のアイドルグループ、AKB48にも通じる」と福嶋さんは見ている。

 天安門事件以降、中国の知識層を虚無感が覆った。だがこの数年、政府の規制をかいくぐってツイッターを使う人々の間では、気軽な感覚で政治に関するやりとりも行われているという。

 情報の透明化で変化をおこすことができる――。ウィキリークスや中東の変革によって、その実例が世界で共有された。中国では変革のうねりにまでは結びついていない。「ただ、ネットのゆるくて敷居の低い草の根のつながりが、虚無感を脱する前向きの動きにつながるかもしれない。潮目は変わっている」と福嶋さんは感じている。(編集委員・平 和博)

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