「建国義勇軍」や「国賊征伐隊」などと名乗って銃弾を撃ち込んだ事件で、岐阜県の刀剣愛好家団体の会長ら6人が逮捕された。
容疑は、東京と大阪のアーレフ(オウム真理教から改称)と広島県教職員組合を銃撃したというものだ。銃撃後の報道機関への犯行声明で、「赤報隊の生き残りや。おまえら殺してやるからな。まずはアレフや」「全国の日教組を殱滅(せんめつ)する」などといっていた。
不審物を仕掛けたり銃弾と脅迫状を送りつけたりする手口もあり、同じような事件は昨年11月から全国10都道府県で計23件にのぼった。日教組やアーレフのほか、朝鮮総連や社民党も狙われた。個人では、政治家や外務審議官の自宅や事務所が次々と標的にされた。
自分と意見が違うからといって、暴力を使って、「殺す」「殱滅する」などとおどすのは、まさにテロ活動にほかならない。民主主義社会への挑戦である。
警察は逮捕に合わせ、全国約60カ所を家宅捜索している。一連の事件との関係を厳しく調べて全容を明らかにしてほしい。事件によっては、ほかに犯人がいる可能性もある。追及の手をゆるめてはならない。
今回逮捕された刀剣愛好家団体会長らは警察の右翼関係者のリストには載っていなかった。しかし、会報で「七生報国」などの言葉を使っていることから、右翼的な考えを持っていたと警察はみている。思想的な背景があったのかどうかについても十分な捜査をする必要がある。
逮捕された6人はすべて刀剣愛好家団体の会員だった。日本と中国の間で領有権争いのある尖閣諸島に一昨年上陸したと主張し、団体のホームページにその際の写真を載せている。上半身はだかで日本刀を振り回すというもので、中国を侮辱する言葉が使われている。
見逃せないのは、そうした危険な団体と西村真悟衆院議員との関係だ。旧自由党で民主党所属の西村氏は今年7月、団体の最高顧問に就任していた。
団体会長が役員を務める会社から、99年から昨年まで10万円単位で、さらに今年は計150万円の政治献金を受け取っていた。団体の会報には西村氏を応援する記事も掲載されていた。
西村氏は現在入院中というが、秘書らによると、つきあいは4、5年前からで、刀剣愛好家団体の会合に出席して講演などをしていたという。どういう関係だったのか西村氏自身がきちんと説明する必要がある。こうした暴力的な団体とかかわるだけでも、政治家としての責任は免れない。
西村氏が所属する民主党の責任も重い。直ちに調査して事実を明らかにすべきだ。
暴力を肯定し、民主主義を否定するような団体には、日頃から厳しい目を向けておかなければならない。
(12/20 00:08)
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