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〈はぐ〉小さく生まれて――同じ境遇の家族に勇気を

2010年7月14日15時6分

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写真6月14日、横浜スタジアム、河合博司撮影

 「新生児集中治療室(NICU)や命の重さに目を向けてもらいたい」

 プロ野球横浜ベイスターズ内野手の村田修一さん(29)は昨年12月、横浜市内の中学での「命の授業」で語った。

 長男の閏哉(じゅんや)くん(4)は2006年2月、神奈川県内の病院で妊娠24週の早産で生まれ、NICUに入院した。体重712グラム。産声もあげることができなかった。

 数日後、腸に穴が開き、手術のため転院が必要になった。しかし、手術可能な県内のNICUはどこも満床。静岡県になら空きがあったが、到着までに亡くなる危険性がある。2時間後、県立こども医療センターに1床の空きができ、息子は搬送された。

 だが、出血が止まらない。担当医の豊島勝昭さん(41)に「このままみとることになるかもしれません」と言われた。体中の血が5回入れ替わるほどの輸血をし、手術できたのは4日後のことだった。

 小さな体で、生死の境をさまよいながら治療に耐える息子を見て、村田さんは痛感した。自分はまだまだ野球に対して甘かった、と。成績がぐんと伸びたのは、それからだ。07年、08年と2年続けて本塁打王を獲得した。

 低出生体重児が増える一方、NICUのベッド数は足りない。全国のNICUを備えた病院の9割は、入院依頼を断った経験があるという。「息子は何かを伝えるために、小さく生まれてきたのかもしれない」。新生児医療を取り巻く現状を知り、思った。野球選手の自分に、何かできることはないだろうか。

 新生児医療の慈善活動を始めた。自分が打った本塁打数に応じて病院に寄付金を贈り、子どもがNICUに入院していた家族らを野球観戦に招待。クリスマスにはサンタクロース姿で病室を訪れ、早産児や家族を激励してきた。

 《娘は930グラムで生まれ、あと10日ほどで3歳になります。村田選手のこの活動を本当に尊敬しています》《もうすぐ1歳になる娘は、この前の観戦で閏くんにいい子いい子していただきました。こういう場を設けてくださり、ありがとうございました》

 村田さんのブログには、こんなコメントが並ぶ。

 閏哉くんは今春、幼稚園の年中になり、一緒にキャッチボールもできるようになった。村田さんが試合で三振して帰ると、「ホームランがよかったのに」と口をとがらせる。

 身長、視力、今後の進学……。今も心配がないわけではない。でも、少しずつ成長していく息子の姿が、同じ境遇にいる家族に少しでも勇気を与えられるなら、と願っている。(杉山麻里子)

     ◇

 むらた・しゅういち 福岡県出身。東福岡高校時代に甲子園に出場した。日本大学を経て2002年秋のドラフトで横浜ベイスターズに入団。内野手、主砲として活躍し、本塁打王2回、ベストナイン1回。育児体験をつづった「がんばれ!小さき生命たちよ!」(TBSサービス)が8月に出版される。ブログ「むらたしゅういちの男の子育て日記!!」(http://www.diamondblog.jp/shuichi_murata/)を展開中。

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