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〈はぐ〉虐待、その先に――親になること恐れない

2010年11月17日15時3分

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写真伴まどかさんとまなかちゃん。公開中のドキュメンタリー映画「うまれる」(豪田トモ監督)には、出産を前に揺れ動く伴さん夫妻の姿も収められている=埼玉県狭山市

 もっとカッとなってしまったらどうしよう。そんな恐怖を感じることがある。例えば娘が寝付かず、疲れて思わず「何で寝てくれないの?」と言ってしまった時。「あんたがいるとろくなことがない」「この疫病神」。母の言葉が私の人生観を変えたように、私も娘の一生を左右する一言を投げつけてしまったら。

 埼玉県狭山市の助産師、伴まどかさん(32)は、普段のはじけるような笑顔と裏腹に、様々なかっとうを乗り越えながらまなかちゃん(10カ月)を産み、育ててきた。

 母との記憶は暗いものばかりだ。兄と弟はかわいがられていたのに、自分だけ「あんたなんかいないほうがいい」と疎まれ、風呂に沈められたり靴で踏まれたりした。好きになってもらおうと必死だった。クラス一の成績をとっても、生徒会長を務めてもほめてくれない。周囲から称賛されても満たされなかった。中3の時に両親が離婚。以来、母の連絡先も分からない。

 母子関係について深く知りたい、と助産師を目指した。大学在学中、2人以上の子を育てる母親100人以上を調査した。それぞれの子で、いとおしさに差はあるか。あるなら、なぜか。でも、子ども時代の苦しさを和らげるようなものは見いだせなかった。

 お産に立ち会うと、多くの親たちは我が子と対面し「かわいい」と歓声を上げる。なぜ自分はあんな目に遭ったのかと考え込んだ。まれに「本当は産みたくない」と漏らす母親にも出会った。「いらない、なんて言わないで」と、つい感情が高ぶった。

 勉強や仕事を通して少し見えてきたものもある。自分は33週で生まれた。幼い兄が階段から落ちそうになり、防ごうとした母が転落。早産した。3カ月入院し母乳も飲めなかった。普通の親子関係を築きづらい状況だったことは似た事例を見て理解できた。

 大学時代に「虐待は連鎖する」と聞いてから、出産を恐れてきた。「みんながそうなるわけじゃないよ」と背中を押してくれたのは、夫の真和さん(32)だ。妊娠中に気持ちが揺れた時も一緒に悩み、支えてくれた。

 仕事で感謝されても、幼少時の体験が邪魔をして、「他の助産師でもよかったでしょ」と自尊感情を持てずにきたが、真和さんの「まどかがいてくれて本当によかった」という言葉を最近やっと素直に受け取れるようになった。

 それでも、まだ時々「別に私じゃなくてもいいよな」という思いがわいてくる。なかなか変わりきれず苦しいが、まなかちゃんにこれだけは伝えたい。「そのままのあなたでいいんだよ」。親になることを恐れず、「夢はお嫁さん」よりも、「夢はお母さん」と言うような子になってほしい。(三島あずさ)

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