井筒和幸さん井筒和幸さん

逃げて生き延びるんや

2年前、「ヒーローショー」という映画を撮った。つき合ってる女にハートマーク付きのメールが送られてきたとかそんなくだらんことで、大学生が相手の男をぼこぼこにする。相手がやり返す。暴力が暴力を呼び、しまいにはパワーショベルで穴を掘(ほ)って生き埋(う)めにしてまう。実際に起きた事件を下敷(したじ)きにした。

最近のいじめのニュースを見ると、よく似てる。きっかけはつまらんこと。気ィ弱いとか服がダサいとか貧乏だとか、理由をつけて、うさ晴らしする。殴(なぐ)ったり、金とったり、エスカレートする。いじめっ子の中でも序列(じょれつ)がある。弱いのは、いじめられたくないから反抗せずに従(したが)う。寂(さび)しいから強いヤツに寄(よ)ってく。

根っこには退屈(たいくつ)があるんだろう。ゲームにテレビに映画。時間つぶしのものばっか。いい大人が、百均(ひゃっきん)ショップで売ってるような薄っぺらい道徳を君らに押しつけて、金だけ取ってる。

僕は「逆境(ぎゃっきょう)に勝て」とか、カッコつけたようなことは言わない。一つ言えるのは、そんなくだらん世界からは「全力で逃げろ」。いじめられてる子はもちろん、付き合いでいじめてる君も。

映画「ゲッタウェイ」で、スティーブ・マックイーンがテキサスからメキシコをめざしたように、君らも這(は)ってでも逃げろ。さして面白くないのに笑うな。迎合(げいごう)を迫(せま)る社会からドロップアウトして、孤高(ここう)をめざせ。逃げ道がわからなかったら、通りすがりのおっちゃん、おばちゃんでもいいから、「困ってる」って言いまくれ。

いじめは1人ではできない。首謀者(しゅぼうしゃ)も孤独(こどく)に追い込んでやれ。散(ち)り散(ぢ)りに逃げて、生き延(の)びるんや。(いづつ・かずゆき=映画監督)