金子勝さん金子勝さん

今の大人と違った生き方を

子どもは大人の背中を見て育つと言いますが、君には大人のまねをしないでほしいと思っています。

ある国会議員(こっかいぎいん)が、高額所得(こうがくしょとく)の芸能人(げいのうじん)の母親が生活保護(ほご)を受けていることを国会で問題にしました。その芸能人は法律(ほうりつ=生活保護法)に違反していたわけではありません。でも、人気商売である芸能人が反論(はんろん)できないのをよいことに、テレビや週刊誌からも袋だたきにされ、多くの人がその騒動(そうどう)を楽しみました。

君がいじめている子と似ていませんか。逃げ場がどこにもなく、先生も守ってくれず、抵抗(ていこう)する手段(しゅだん)も限(かぎ)られているからです。

その議員は、親族(しんぞく)の扶養義務(ふようぎむ)を強めるべきだと主張しました。でも、そんなことをされたら、たちまち生活に困(こま)ってしまう弱い立場の親子だっているんです。

もう一つ、時事(じじ)問題を挙げます。東京電力福島第一原発(げんぱつ)の事故では、16万人が避難(ひなん)しました。放射能(ほうしゃのう)の不安におびえながら逃げ場のない人たちもたくさんいます。自殺者も出ました。

でも、東電の経営者たちは明確な責任を問われないまま。やはり責任があるはずの原子力安全・保安院の人たちは今も原発の「安全性」を審査(しんさ)しています。私には、いじめ問題への対応が甘かった大津市教育委員会とダブって見えます。

弱い人はいじめられ、追い込まれる。強い人は何をしても許され、平気でいられる。こんな社会を今の大人は作っているんです。なんかおかしいですよね?

君はこの新聞を読んでいないかもしれません。私は実は「いじめている大人」が読んで、間接的(かんせつてき)に君に届くのを期待しています。どうか、今の大人とは違(ちが)った生き方をしてください。(かねこ・まさる=経済学者)