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2012年8月21日15時7分

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いじめられている君へ

《いじめられている君へ:番外編》川上未映子さん

写真:川上未映子さん拡大川上未映子さん

■勇気出して大人に知らせて

 いじめられていることを人に言うのは、むずかしいよね。心配かけたくないし、それを知られることじたいが恥ずかしいし。おおごとにならないだろうか。もっとひどくならないだろうか。誰を信用すればいいのか、そもそも、信用してもいいのか。何もかも、たまらなく不安だと思う。

 それでも、いま君が置かれている状況を、勇気をだして大人に知らせてほしい。陰口を言われたり、無視されたりだったなら(それだってじゅうぶん辛〈つら〉いことだけど)、もしかしたら気の持ちようで何とか切り抜けることができるかもしれない。でも、もしもいま君が、学校に行けないほどの苦痛を味わっていたり、暴力を受けたりしているのなら、それはもう、君が我慢したり、耐えたり、相手の改心を期待したり、いいなりになったりすることで何とかなるような問題じゃありません。親や、教師や、警察といった、君をいじめている人間たちよりも強い人間が介入して、彼らを罰して、力ずくででも、やめさせなければならない問題なんです。

 病気になったら病院へ行き、大きな怪我(けが)をしたら救急車を呼ぶように、堂々と、当たり前のこととして――とてもむずかしいことだけれど、どうか勇気をだして、助けを求めてください。親も先生も、信用できないかもしれないけれど、大津のいじめの事件があってから、社会も大人たちも、少しずつだけれど変わりつつあります。だから、あきらめないで、助けを求めてください。直接言えないのなら、ネット相談や相談ダイヤルなど、方法はいくつかあります。おおごとにして、まったくかまいません。外の世界には君の味方が大勢います。その人たちに、どうにかして知らせてください。君はまだ子どもで、大人に守られて当たりまえの存在だってことを、大人は君を守らなければならないんだってことを、どうか、忘れないで下さい。

 それでも万が一、誰も力になってくれなかったら。

 そのときは――これもむずかしいけれど、学校へ行かない選択をしてください。学校は死にたくなるような気持ちを抱えてまで行かなければならない場所ではないです。ある時期にしばらく学校に行かなかったからといって、これからの人生の大事な部分がダメになるようなことは、決してありません。なんとか、安全な場所を見つけてください。ひとりでだって、学ぶことはできます。本やネットでちょっと調べるだけで、色々な方法を見つけることができます。いちばん大切なのは、君が安心して毎日をふつうに過ごせること。これより大事なことはないよ。

 つらい今日が精いっぱいで、先のことなんか考えられないかもしれない。でも、生きていさえすれば、かならずいまとはまったく違うところへ出ることができます。これは本当。16歳になれば選択肢がいっきに増えて、いまとはちがう人間関係ができて、いまとはちがう考えだってもてるようになる。ぜったいに、よくなる。何もかもが変わったんだと感じるときが、かならずきます。(かわかみ・みえこ=作家)

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