イラクのフセイン大統領と2人の息子に対して48時間以内の国外退去を求めたブッシュ米大統領は、最後通告の期限が切れる19日夜(日本時間20日午前)にも対イラク攻撃を開始する見通しだ。フライシャー米大統領報道官は18日、イラク側が最後通告に応じる兆候はないとしたうえで、「応じなければ、フセインは最後の過ちを犯すことになる」と警告した。
18日付の米ワシントン・ポスト紙は米政府高官の話として、ブッシュ大統領が最後通告の期限後に改めて全米向けに演説し、武力行使の開始を発表するとの見通しを伝えた。同日付のニューヨーク・タイムズ紙は、フセイン大統領が国外退去要求を公式に拒否すれば、期限前の攻撃開始もありうるとの見方を伝えた。
同報道官は、「48時間」の解釈について、大統領が演説を始めた米東部時間17日午後8時の48時間後の19日午後8時(日本時間20日午前10時)になると述べた。
また、「彼らが国外退去に応じても、米軍は大量破壊兵器の武装解除のため、戦闘なしにイラクに入ることになる」と述べ、平和的な政権打倒のケースでも米軍のイラク進駐計画は変わらないことを明らかにした。
フセイン大統領の国外退去について、フライシャー報道官は、「望めばそうすることは可能だろう」と述べ、受け入れ先があるとの見方を示した。パウエル国務長官は16日のフォックステレビで「戦争回避への貢献として、受け入れようという国が数カ国ある」と述べている。フセイン大統領の亡命案は、アラブ首長国連邦(UAE)が公式に提案しているが、受け入れを公式に表明している国はない。ただ、米政府はフセイン大統領らに対する戦争犯罪の適用を検討しており、亡命しても免責は保証されないとみられる。
ブッシュ大統領がフセイン氏と後継者候補とされる息子2人の計3人に絞って亡命を促したことは、「フセイン王朝」の存続は許さない、との姿勢を示す一方、イラクの支配政党バース党などの組織、機構については完全には解体せず、新生イラクの安定化のために温存する可能性を示唆したといえる。
攻撃に踏み切った場合、多国籍軍は当初2日間で軍、政府の主要拠点など3000カ所以上を精密誘導兵器で破壊。相前後してクウェートからイラク南部に地上軍を投入し、バグダッドを目指す構えだ。北部については当初、最強部隊の一つの陸軍第4師団をトルコからイラク北部のクルド人自治区に侵攻させる計画だったが、トルコ国会に米軍駐留を拒絶されたため、計画は見直されている模様だ。19日に予定される米軍駐留法案の国会再提出の動きを見極めるとみられる。
作戦の期間について、軍事専門家らは圧倒的な兵力の差などから「4〜6週間、あるいはそれ以下」(コーデスマン米戦略国際問題研究所上級研究員)と見ている。ブッシュ大統領が最後通告で警告したようにイラク軍が投降すれば、期間はさらに短くなる可能性がある。米軍は、上空を旋回する軍用機からイラク国民向けにラジオ放送を実施するなど情報戦を始めており、今回の最後通告も放送された。
半面、不確定要素も多い。イラク人の抵抗、バグダッドでの市街戦、イラク軍による生物・化学兵器の使用などによって、事態は大きく変化する。
攻撃開始の時機は天候上、空が暗くなる新月周辺が適切とされてきたが、兵器の精密誘導化が進んだことから、大きな判断要素にはなっていないとの見方が有力だ。砂漠の高温についても、米軍側には、冷房付きの軍用車両もあるうえ、「カリフォルニアやネバダの砂漠で訓練しており、砂漠戦はイラク軍より慣れている」(同研究員)と楽観する見方もある。
(03/19 00:05)
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