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![]() イエローストン(米) 守れ世界遺産―海外では(1)2005年11月14日15時00分 今年7月、世界自然遺産への登録が決まった北海道・知床。そこに絶滅したオオカミをロシア極東地域から再導入しようとする案が浮上している。増えすぎたエゾシカを減らすなど本来の生態系を取り戻すのが狙いだ。再びオオカミが姿を現せば何が起きるのか。同じ世界自然遺産で、10年前にオオカミを再導入した米国北西部のイエローストン国立公園を訪ねた。
■シカ減り植生復活 高倍率望遠鏡の向こうに黒いオオカミが現れた。草を食べるアメリカバイソンに近づき、周りをうろつく。1頭だけでの狩りは無理だと判断したのか、10分後にはその場を立ち去った。 イエローストン国立公園を訪れる観光客たちの中で、オオカミを見るチャンスに恵まれるのはごく少数だ。それでもオオカミの出没情報があった場所には、連日、望遠鏡が放列をなす。 オオカミが倒したバイソンが山中にあると聞き、レンジャーたちに同行してもらい現場を見に行った。観光道路から山を越えた斜面に、腐乱臭が立ちこめる一角があった。近づくと脚の一部や頭部が散乱している。 イエローストン国立公園は、四国の半分近い面積、約9千平方キロメートルにわたって広がる。73年の絶滅危惧(きぐ)種法でオオカミが保護対象になり、回復計画が持ち上がった。95年から96年にかけて、カナダで捕獲された計31頭が連れてこられた。04年には公園内で171頭、公園外も含めると300頭に増えた。 一方、シカの頭数は、夏場に3万頭近くいたのが、2万5千頭足らずに減り、食害が深刻だったアスペンの木や植生も回復した。オオカミを頂点とする生態系の復活で、食物連鎖のピラミッドも正常な形に復活したという。 同公園のマシューズ広報官は「オオカミ再導入で本来の生態系が戻り、公園が健康的になった」と話す。オオカミウオッチングは観光の目玉にもなっている。 ■家畜襲えば射殺も もちろんいい面ばかりではない。狂犬病にならない限りオオカミが人を襲うことはめったにないが、近隣の農家の家畜を襲う被害が起きている。 こうした被害を想定し、導入時にオオカミが家畜を襲っているのを目撃した場合は、銃で撃ち殺してもいいことを決めている。また、会員数約40万人の民間自然保護団体が家畜被害に補償金を出している。公園によれば、今のところ目立ったトラブルはないという。 ■知床導入「難しい」 しかし、知床へのオオカミ再導入案には、環境省や自治体は「現時点では非現実的」との見解だ。同省自然環境計画課の岡野隆宏世界自然遺産専門官は「まず、オオカミが生態系になじんで、シカ対策に効果を発揮するかどうかの裏付けがない。その上、知床で放したオオカミが半島外に広がって、家畜に被害が出る懸念もある。社会的な理解を考えると現段階では難しいのではないか」と話す。 ◇ 〈知床へのオオカミ再導入案〉 知床の生態系復元に取り組んでいる「しれとこ100平方メートル運動地森林再生専門委員会」が98年から可能性について検討。日本オオカミ協会(会長・丸山直樹東京農工大教授)も今夏、増えすぎたエゾシカ問題などを解決するためにオオカミを復活させるよう、環境省や北海道、斜里町、羅臼町に要望書を届けた。協会の構想では、ロシア極東のオオカミを30頭前後、放す。 知床ではエゾシカが増えすぎて、木の皮をかじって枯らしたり、希少植物を食い荒らしたりするなど生態系への悪影響が深刻になっている。
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