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乗務予定が突然白紙 育児・ローン…日航パイロット困惑

2010年10月8日5時1分

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 「あなたに貢献できる場所はない」――。日本航空がパイロット約370人を名指しして、退職を迫り始めた。突然、「空白」の乗務スケジュールを突きつけられたパイロットたち。会社に机はなく、自宅待機を強いられている。育児や住宅ローンを抱え、途方に暮れる。

 9月24日夜。37歳の副操縦士は翌月の乗務予定を確認しようと、自宅でパソコンを開いた。毎月ぎっしりと便名が書き込まれるカレンダーが、「白紙」になっていた。

 翌日、空港の事務所に行くと、同じように白紙の予定表を受け取った同僚がたくさんいた。自分が退職を迫られていることを知るのに時間はかからなかった。「まだ30代。何で自分が……」。頭が真っ白になった。

 同僚の中には、直前に事務所で見せてもらった仮の乗務スケジュールには乗務するはずの便名が書き込まれていたのに、正式発表の当日には便名がすべて消されていた人もいた。

 副操縦士の場合、今年に入ってけがで数カ月休んだ。これが日航の整理解雇の人選基準案にある「(今年度)病気欠勤合計41日以上の者」にひっかかった。

 けがは完治し、9月から通常業務をこなしていた。けがの時以外に長期の休みを取ったことはない。それなのに、今月上旬の面談で、会社から「あなたは今後の会社業務に貢献できない」と言われた。

 パイロットは体調が少しでもすぐれないと、事故を防ぐためにフライトを取りやめ、「病気欠勤」とするのが通例だ。風邪薬を飲んだだけでも休む。このルールは、自己申告で保たれている。

 別の副操縦士(39)は、解雇の人選基準案にある「過去2年5カ月で合計81日以上の病気欠勤」にあたるとして対象になった。風邪や、長時間の飛行で腰を痛めて長く休んだことがあった。「こんなやり方では、今後は風邪をひいても誰も休まなくなり、安全に問題が出るだろう」と話す。

 「高齢」を理由に対象とされた57歳の機長は、「パイロットは何よりも経験が重要なはず。年齢の高い方から退職を迫るのはいかがなものか」と話す。

 子どもを抱えた対象者は家計への影響が気にかかる。

 3人の子どもがいる副操縦士(51)は、娘が大学受験の願書を出す直前、白紙の乗務スケジュールを受け取った。娘からは、「願書に、お父さんの職業を『日本航空』と書いていいの」と聞かれた。言葉に窮した。

 別の副操縦士(51)には2人の子どもがいる。住宅ローンも10年近く残っている。日航からもローンを借りている。「もし、退職したら家を失うかもしれない」

 一方、ある会社幹部は、苦しい胸の内を明かす。「整理解雇などしたくない。だが、人員整理は再建を助けてもらっている金融機関との約束事で、絶対に達成しなければならない。個々の能力で甲乙がつけがたければ、年齢や病欠日数など、客観的な基準で線引きせざるを得ない」と話す。今後、再就職先のあっせんなど、退職しやすい環境作りに努めるつもりだ。(小林誠一、永田工)

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