イラクで人質になった邦人3人は解放されたが、バグダッド近郊のアブグレイブで拉致されたとみられるフリージャーナリストら邦人2人は依然行方不明のままだ。付近では、ほかにも外国人の拉致事件があり、米軍への攻撃も相次いでいる。アンマンに通じる高速道路が走り、バグダッド空港も近い交通の要衝であるアブグレイブが危険地帯となっている現状は、米軍やイラク警察当局による首都近郊の治安維持が破綻(はたん)しつつあることを示しているといえる。
これまで米軍との間で激しい戦闘が起きていたのは、旧フセイン政権の支持者が多い「スンニ派三角地帯」の一角にあるファルージャやラマディだった。日本人3人を含む外国人の人質事件の多くもファルージャを中心に起きていた。
これらの都市の東に位置し、バグダッド中心部から西へ約20キロの幹線道路沿いにあるアブグレイブが今、米軍と武装勢力の衝突の最前線になりつつある。
9日には、対戦車砲や銃で武装した数百人が米軍と大規模な戦闘を繰り広げ、少なくとも米兵ら9人が死亡。この前後に、米軍の燃料補給車などの車列が襲われ、米兵2人と運転手らの請負業者7人が拉致された。イタリア人4人も拉致されたとの情報もある。
11日にも、米軍のヘリコプターが同地区で撃ち落とされ、乗員2人が死亡した。
アブグレイブには旧フセイン政権が政治犯らを収容していた大規模な刑務所があった。イラク戦争後、米軍が接収し、対米攻撃に関与した疑いなどで数千人を収容している。「無実」を訴えるイラク人も多い。このため、アブグレイブは対米攻撃を続ける武装組織にとって、象徴的な場所になっているともされる。
一方、上空はバグダッド空港に離着陸する航空機の航路となっている。昨年秋ごろから米軍機や民間貨物機などへの攻撃も相次いだため、米軍やイラク当局は、検問所を数カ所設けていたほか、パトロールを重ねて厳戒態勢を敷いていた。
これに対して武装組織側は民家や畑地に潜み、夜陰に紛れて、航空機や刑務所を攻撃してきた。
邦人2人は今回、白昼路上で拉致されたとみられており、武装組織の活動の公然化と治安の極端な悪化が進んでいるとの見方が出ている。
(04/16 19:04)
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